世界唯一の被爆国である日本にも原爆開発計画があった。そんな驚くべき事実が、テレビ朝日開局50周年記念「原爆~63年目の真実~あの夏“封印”された昭和史最大のミステリー」(8月2日午後9時放送)で明かされる。幻の原爆開発計画は3話構成の中の1話で、開発秘話がドキュメンタリーとドラマとしてまとめられている。

 日米開戦目前の1941年(昭16)4月、陸軍が東京・駒込の理化学研究所に原子爆弾の開発を正式依頼。優秀な科学者たちが米国の科学者らと同様、ウランの分離で原爆製造が可能だと陸軍に伝えた。

 その原料となるウラン鉱石の採掘に、福島県石川町に住む15歳の中学生たち160人が動員される。その1人の証言を軸に物語は進む。同町で「1000キロ」相当の鉱脈が発見されたからだ。「マッチ箱1箱分でニューヨークを吹き飛ばす爆弾ができる」と軍人に聞かされる。終戦となる45年、研究所が空襲を受けて実験装置が炎上。計画は断念されたが、中学生らはわらじ履きに素手でウランを掘り続けて終戦を迎える。そして、真実は封印された。

 戦後63年、原爆の記憶は年々風化。当事者たちの証言を得られるギリギリの時期でもある。テレビ朝日は「生き証人たちの再現ドラマは、昭和史から置き去りにされた真実であり、語り継がなくてはならない平和へのメッセージ」と制作意図を説明した。

 番組にナビゲーターとして参加した中井貴一(46)は「原子力には太陽の面(エネルギーとしての発電)と悪魔の面があると思う。悪魔の面を伝えるのは自分たちが生きていくために必要なこと」と語っている。