4日に保釈された俳優押尾学被告(32)の弁護団が、合成麻薬MDMAをのんで亡くなった田中香織さん(享年30)の遺族に対し、6日にも話し合いの申し出をする方向であることが5日、分かった。保護責任者遺棄罪で懲役2年6月の判決を受けた押尾被告は、無罪を主張する一方で、田中さんを救えなかったことへの道義的責任も感じており、墓参りと遺族への面会を強く希望している。弁護団は遺族の感情を考慮し、まずは民事的な補償を含めた誠意を見せ、理解を求め、最終的には示談を交わしたい意向のようだ。

 弁護団は押尾被告の拘置中から、控訴審を前に田中さんの両親へのおわびや、示談を申し入れる可能性を示唆してきた。田中さんの両親は1審の証人尋問で、「娘の残されていた人生と同じくらいの刑を」と主張しており、懲役2年6月の刑に納得しているとは考えにくい。また、東京地検も控訴を見送り、控訴審で1審より重い刑が出ることもない。そのため、一般的には、民事訴訟に傾く可能性もあるが、5日現在その動きはない。

 弁護団は田中さんの遺族側との認識の隔たりは大きく、面会や墓参が許される可能性は低いと予測している。それでも自らの口で遺族に思いを伝え、墓参したいという同被告の思いを実現するためにも、民事提訴される前に誠意を見せたいとしている。もし控訴審前に示談が成立すれば、控訴審で、情状面で有利に働く可能性も高く、その意味でも遺族側との接触は今後に向けた大きな意味合いを持つ。

 都内にある押尾被告の実家前には、この日も20人以上の報道陣が待ち構えたが同被告は帰宅しなかった。都内で弁護人と行動をともにしているもようで、今後について話し合っているとみられる。

 [2010年10月6日9時54分

 紙面から]ソーシャルブックマーク