<第23回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞>

 第23回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原裕次郎記念館協賛)が1日、決定した。作品賞には李相日監督(36)の「悪人」が選ばれた。授賞式は28日に東京・紀尾井町のホテルニューオータニで行われる。

 李監督の「悪人」が作品賞、主演男優賞、主演女優賞の3冠を獲得した。李監督にとっては06年「フラガール」での作品賞に次ぎ2度目の受賞。「みんなに報告したら実感がわくのかな」と、控えめに喜びを表した。

 ベストセラー小説が原作とはいえ、テーマは人間の善悪で、殺人も描かれるなど、明るい話ではない。李監督は「まったくダメかそこそこか、どちらかだと思ってました」と話した。結果は20億円を見込むヒットだ。李監督がこれまで一貫して貫いてきた「人間を描きたい」という思いが、観客にも通じた。

 壁に立ち向かいハワイアンセンターを興す女性たちを描いた「フラガール」と、殺人、逃避行する男女2人が主人公の「悪人」。正反対のように見えるが、共通しているのは人間。

 李監督は「映画のやることは、人間をどう見せられるかしかない。人間の嫌な部分をいっぱい見せるのは、残ってる善意を見いだしたいから」と語った。どんでん返しを考えることもあるが、人物が衝撃的な筋書きに隠れてしまって犠牲になるのが嫌だと言う。

 人間をもっと見たい、という言葉どおり、好きなシーンを聞くと「好きというより、それぞれの役者さんのアップの表情を見ると、この瞬間にこの人を撮れて良かったと思います」と話した。【小林千穂】

 [2010年12月2日9時36分

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