男性3人組ダンス&ボーカルユニットw-inds.が28日、都内の日本武道館でデビュー10周年記念ライブを開催した。当初は、10年前のデビュー日、3月14日の予定が、東日本大震災が発生したため延期。被災地や、高い人気を誇るアジア全域にもファンは多く、インターネット動画サイトでライブの一部を無料で生配信した。

 東日本大震災で仕切り直した10周年ライブは、3人にとって万感の思いと、ファンへの恩返しの気持ちが交錯した。千葉涼平(26)は「想像もできないくらいにつらいことがあり、まさに続いてる方もいる。音楽や言葉しかないけど、皆さんの力になるように、やっていきたい」。橘慶太(25)は「東北地方にもライブに行きたい」と約束した。

 1万3000人の観客の中には、被災地で亡くなった友人に代わり、宮城県石巻市から上京してきた20代女性がいた。看護師矢矧千明さん(25)は、自宅が福島第1原発の避難区域の福島県南相馬市のため、チケットを取りに戻れなかった。「南相馬市内→飯舘村→栃木県鹿沼市と避難所も転々でした。でも、ライブだけが楽しみで、ダメもとで問い合わせたらOKでした。励みになりました」と喜びをかみしめた。被災者でチケットを紛失した人たちも会場に招き入れた。電源車を備え、照明もLEDに差しかえ、消費電力は通常公演の5分の1に抑えた。募金箱も設置し、ライブ収益の一部も義援金にする。

 被災地にも届くように、インターネット動画サイトで異例の無料生配信も行った。関係者は「スマートフォンでも見られるので、東北でも見てる人がいたらうれしい」。内実は、お祝いムード一色ではなかった。

 だからこそライブでは、デビュー曲「Forever

 Memories」から最新曲「Let’s

 get

 it

 on」まで、誰もが知ってるシングル曲を中心に全18曲を披露した。どの客席からも見やすい円形ステージで、全力で歌い踊る。緒方龍一(25)は力強く言った。「会場はもちろん、それ以外の人にも向けてやっているので、悲しい気持ちにならないで。さまざまなメッセージを込めて、活動するよ」。暗い影を感じさせないパフォーマンスで、一夜の夢を届けた。【瀬津真也】