女優吉永小百合(69)が、東日本大震災と福島第1原発事故の復興支援のため、9年ぶり4枚目の朗読CD「第二楽章

 福島への思い」を3月11日にリリースする。1986年(昭61)から広島、長崎原爆詩の朗読CDを出し続け、今作は、福島県民の「脱原発」への思いなどを読み上げている。取材では、経済優先の安倍政権に疑問を呈した。

 東日本大震災発生から約4年。福島を思い、吉永が「第二楽章」を作った。「『忘れないで』とメッセージを(世の中に)送り、(被災地に)寄り添って支えたい」という思いからだ。

 きっかけは、デザイナー三宅一生氏だった。11年7月、広島原爆の被爆者、三宅氏の依頼で原爆詩の朗読を行った際、東日本大震災の被災者、福島市の詩人和合亮一さんの詩を託され、読んだことだった。その後、福島第1原発事故で富岡町から避難した佐藤紫華子(しげこ)さんが、自費出版した詩集「原発難民」を知り、12年4月に福島市で朗読。13年3月に朗読CD制作を考え、昨年10月に制作を始めた。2人の詩に加え、和合さんが10年からプロデュースする福島の小中学生対象の「詩の寺子屋」から詩を選び、吉永の依頼を受けて尺八奏者の藤原道山が音楽を作曲した。

 終戦間近45年3月生まれの吉永にとって「-福島への思い」は、同じ時代の体験を基に作る初めての朗読CDだ。「(過去3作より)つらい。つらいだけじゃなく福島に戻れるといいという願いもある中、希望が見える詩を選びました」。

 吉永は「これだけ地震が多い国で原発はやめてほしい」と脱原発を訴える。昨年末には福島第1原発に近い帰還困難地域にマスクを着けて踏み込んだ。「4年で何も変わっていない。除染された土もシートをかけられ、あらゆるところに放置され…想像以上のショック」。その上で、安倍政権に厳しい言葉を並べた。「予算も経済最優先。政治家は福島の復興に対して、どう思っていらっしゃるのか。お金だけ避難している人にあげればいいのか。福島を住めるふるさとに戻すつもりがあるのか…私には見えない。世界でも大変なことが起こり、目を向けてしまえば忘れてしまう」。

 発売前日3月10日には東京・千駄ケ谷の津田ホールで完成記念朗読会を開く。「(朗読は)生きがい。でも、もう『第二楽章』を出すようなことは起きないでほしい。これで終わりにしたい」。印税は全て被災者のために寄付する。【村上幸将】

 ◆「第二楽章」

 吉永が86年から被爆者の体験から生まれた詩の朗読を始め、「(悲劇を)忘れないためにも語り部としておだやかに語り、残す」スタンスから作った朗読CD。97年「第二楽章」(広島編)99年「-長崎から」を発売。06年には、沖縄戦を描いた野坂昭如氏の小説「ウミガメと少年」を朗読した「-沖縄から」をリリース。