女優吉永小百合(67)の主演映画「北のカナリアたち」(阪本順治監督)が3日、公開初日を迎えた。興行収入(興収)27億円を記録した05年の「北の零年」と比較(初日午後1時)して93・9%の動員。興収20億円突破は確実視される好発進となり、吉永は東京・丸の内TOEI1で行われた舞台あいさつで「全国でも朝からたくさんの方が劇場に来てくださっているとうかがいました」と感謝した。

 吉永は取材陣に促され、教え子役の森山未来(28)満島ひかり(26)勝地涼(26)宮崎あおい(26)小池栄子(31)松田龍平(29)と手をつなぐと跳びはねるように全身で喜びを表現した。「最初は、それぞれ主役をやっていらっしゃる方たちとアンサンブルを取れるのか心配でしたが、誰か1人、前に出るのではなく輪になって作れました。俳優としてずっとやってきて、初めてのこと。本当に幸せです」。

 東映創立60周年記念作品として、今季の邦画では屈指の陣容をそろえて昨年12月2日に撮影がスタート。北海道の利尻、礼文島では体感温度氷点下30度の過酷な環境で2カ月、撮影した。6月に再開した夏ロケでも、吉永は冷たい北の海を泳ぎ、約50メートルの煙突を上った。日本映画界のトップを走りながら、体を張って作品にかける姿勢を見てきた夫役の柴田恭兵(61)は「吉永さんに褒められたかったのでみんな頑張ったんです」と打ち明けた。

 この日、劇中の分校をイメージして作られた壇上の黒板に吉永は「輪になって」と書いた。劇中で演じた女教師川島はるのように慈愛に満ちた吉永が、日本映画界に新たな輪を作り上げた。【村上幸将】