【カンヌ(フランス)22日=村上幸将】カンヌ映画祭コンペティション部門出品作「2つ目の窓」(河瀬直美監督、7月26日公開)で俳優デビューした村上虹郎(17)と、共演の父淳(40)が日刊スポーツの取材に応じた。虹郎が俳優になった経緯、父子でカンヌの舞台に立った思いを語った。

 カンヌの舞台に、俳優駆け出しの息子と映画俳優21年の父が並んだ。06年8月に淳と歌手UAが離婚後、虹郎は母と暮らしてきたが、劇中でも離婚後、離れて暮らす父子を演じた。1年半前に淳が河瀬監督から取材を受けたことが、全ての始まりだった。

 淳

 「(監督が)映画を撮りたい。取材させて。離婚して(母子が)島に移り住み、東京に父さんがいて、どういう心情かを教えて」と連絡してきた。取材2回目で脚本になって、どう読んでも、「主演が虹郎だろう」と感じました。

 淳は虹郎の感受性の強さを感じ、河瀬監督作品への出演を勧めた。「08年、『七夜待』に出演し、非常に俳優を追い込む監督だと感じたから」。

 俳優業に興味のなかった虹郎だが、父に勧められ、やる気になり、昨年6月に留学先のカナダから帰国。しかし、UAは大反対でオファーを断った。

 虹郎

 「(UAは)早すぎる。人としてもまだ出来ていない」と。でも、後悔したくないから一晩話した。父母の出会い、芸能界での苦労とか…を、初めて聞いた。良かった。

 母を説き伏せ、オーディションを受けたが落選。それでも、河瀬組の美術部に入り、冷蔵庫を洗うなどしていて主役に選ばれた。「何が分からないかも分からない」状態で演技する中、父との共演が決まった。セリフの「何で母さんと別れたの」「ストレートな質問だな」という居酒屋の会話などはアドリブだ。

 虹郎

 実はその質問は聞きたくなかったけど、監督から「聞け」と言われて。

 淳

 台本には書いてないが(監督から取材され、思いは)行間に書いてある。

 淳は俳優の道を進む虹郎に向け、「初出演&主演&初カンヌ。出来すぎ。この先の人生は、苦労と困難が待っている」と言いつつ、「同業者として、これほどの素材はないと感じた。自由にやればいい」とエールを送った。

 ◆村上淳(むらかみ・じゅん)1973年(昭48)7月23日、大阪府生まれ。モデルを経て、92年のフジテレビ系「アルファベット2/3」で俳優デビュー。93年「ぷるぷる

 天使的休日」以降、日本映画にこだわり演じ続ける。176センチ、62キロ。血液型O。

 ◆村上虹郎(むらかみ・にじろう)1997年(平9)3月17日、東京都生まれ。11年に母親のUAと沖縄に移住後、カナダの高校に留学した。今作品出演のために帰国し、父の事務所ディケイドに所属。特技は水泳、ギター、剣道、乗馬など。168センチ、血液型A。