都内の名門進学校で、男子生徒が同級生らにナイフで切り付けた。17日午後0時5分ごろ、東京都千代田区の暁星高校で、高校1年の男子生徒2人と男性教諭(49)の計3人がナイフで肩や指などを切り付けられた。警視庁麹町署は傷害の疑いで、同級生の男子生徒(16)を現行犯逮捕した。同署によると「同級生2人にからかわれてカッとなってやった」と容疑を認めている。学校によると、今年になって加害生徒の保護者から「学校での人間関係に悩んでいるのでは」との相談が複数回あったという。

 事件があったのは、午後0時過ぎ。学校などによると、4時間目の自習中、加害生徒が被害生徒とけんかになった。加害生徒は刃渡り約10センチの折り畳みナイフを出して相手の生徒の右肩を刺し、止めに入った別の生徒の右胸を刺したという。男性教諭は生徒がもみ合っているのを見つけて教室に入り、指を切られた。

 この教諭が生徒を取り押さえた。生徒はナイフについて「かばんに入れて家から持って来た」と話しているという。

 学校によると、被害生徒の1人は右肩を4針縫うけがを負い、もう1人は右胸に同程度のけが。教諭は左人さし指を5針縫うけがを負った。学校側は捜査関係者の話として「加害生徒は、被害生徒2人にからかわれて(犯行を)行ったと供述していると聞いている」と話した。

 神田信之副校長(51)によると、加害生徒の保護者からは今年に入り、副校長に直接、3~4回にわたり、学校生活についての相談があったという。当時、生徒と話をした印象から「口数が少なく、自分のことを積極的に話すタイプでもなかった」という。

 相談内容で、いじめの相談があったかについては「保護者の方にも連絡をしていないので答えられない」と回答。学校内の人間関係について悩んでいるとの相談があったのかという質問には「あったと思う」と答えた。教職員の間でも生徒が悩んでいることについて情報を共有していたという。一方、学校として、加害生徒がいじめを受けていたと認識はしていなかったとした。

 高校を運営する暁星学園によると、幼稚園から高校まであるカトリック校で、小中高は男子校。大学医学部などに多くの合格者を出す進学校として知られる。

 同学園の和田信之事務長は報道陣に「教育機関として誠に申し訳ない。再発防止に努めたい」と話した。

 ◆暁星高校 1888年(明21)創立のフランス系カトリックの私立男子校。幼・小・中・高の一貫教育が行われ、高校は帰国子女の編入枠だけで新入生募集はしていない。1学年約170人。今春の大学合格者は東大15人、早大61人、慶大54人。サッカーの強豪で全国高校サッカー選手権には10回出場している。映画「ちはやふる」で人気となった競技カルタでは超名門で全国大会9連覇中。主なOBにサッカー元日本代表の前田遼一、歌舞伎の松本幸四郎、中村吉右衛門、市川猿之助、市川染五郎。俳優の北大路欣也、香川照之、タレントのモト冬樹、グッチ裕三ら。学校所在地は東京都千代田区富士見。