便潜血検査で陽性になった方のうち、実際にがんが見つかるのは2~4%程度です。がん検診と銘打っている割に、がんの発見率が低い、と思いませんか? 陽性の方は全員大腸カメラを受けるように勧められるのに、陰性となった方のほとんどはがんではないとなると、大腸カメラを受けたくないと思ってしまいます。

 病気の方から逆に見ていきましょう。手術が必要な大腸がんでは約90%で便潜血が陽性となります。10%は見逃されてしまうということです。

 私たち内視鏡医が治療を行える早期の大腸がんでは、50%ぐらいしか便潜血検査で分かりません。大腸腺腫と言う、まだがんになる前の良性の状態ではどうでしょうか? 便潜血検査でどのくらい分かるかは、大きさや部位にもよりますが、15~30%程度と報告され、各種文献でまだ分かっていない部分もあります。

 外来でこう説明すると、「一体なぜこんな検査を毎年受けなければいけないのだ」と怒り出す方もいらっしゃいます。怒りもごもっともとしか言いようがないのですが、日本の大腸がん検診受診率はいまだに先進国中でもかなり低い割合です。

 2012年(平24)に発表された国民生活基礎調査では、日本の大腸がん検診受診率は男性で41%、女性で34%です。欧米の受診率70~80%程度とは大きな開きがあります。便潜血検査が陽性となった方でも約30%の方は2次検査である大腸カメラを受診していません。その中にも大腸がんの方が隠れていると考えると、一概にこの簡便な検査を止めるわけにはいかないのです。

 ◆池谷敬(いけや・たかし) 1981年(昭56)9月21日、静岡県出身。浜松医科大卒。2012年から東京・中央区の聖路加国際病院勤務。内視鏡で粘膜下層を剥離するESDという手法で、大腸がんに挑んでいる。