東京都小金井市で昨年5月、歌手活動をしていた冨田真由さん(21)が刺され、一時重体となった事件で、殺人未遂などの罪に問われた無職岩埼友宏被告(28)の裁判員裁判の第4回公判が23日、東京地裁立川支部(阿部浩巳裁判長)で開かれた。

 冨田さん本人が意見陳述をしていたところ、岩埼被告が突然「じゃあ殺せよ」と怒鳴り声をあげ、退廷を命じられた。この事態に、一時休廷となった。意見陳述は10時7分ごろから始まり、冨田さんは涙声ながら事件の様子や、苦しみを振り返り続けた。10時20分ごろに「犯人は心の中で笑っていて、反省なんて1つもしていない。犯人はまた絶対同じことをする」と話していたところ、岩埼被告は「じゃあ殺せよ!」と怒鳴った。裁判長から発言について注意されたが、その後も「殺すわけないだろ!」と繰り返したところで、退廷を命じられた。

 岩埼被告は意見陳述の途中、メモを取るなどしていたが、突然の怒鳴り声に廷内も騒然としていた。

 公判は午前10時40分ごろに再開。冨田さんが読み上げられなかった文面を、検察官が代読したが、その後の論告の最中、冨田さんが体調を崩し、車いすで運ばれるという事態も起きた。

 検察側は論告で「犯人は一方的に好意を募らせた。音楽活動をしていた被害者の一ファンに過ぎない。殺意が強固。執拗(しつよう)残忍で、極めて危険」として、懲役17年を求刑した。判決は28日。