安倍晋三首相は24日、森友学園への国有地払い下げ問題に関する昭恵夫人の「口利き疑惑」を否定した上で、野党の証人喚問要求を拒絶した。一方、自民党は夫人が籠池泰典理事長の妻諄子氏と交わしたメールを公開。夫人が計34通、諄子氏は49通。2人が頻繁に連絡を取り合う実態が、浮き彫りになった。野党は、証人喚問で語った籠池氏と同じ土俵で説明責任を果たすよう、「桟敷席」の夫人に要求。疑惑噴出で事態収束のめどは立たず、政権へのダメージも拡大している。

 「忖度(そんたく)がはたらき、本質にかかわったかといえばそうではない。(問い合わせの結果は)ゼロ回答だ」。安倍首相は参院予算委員会で、昭恵夫人担当の政府職員、谷査恵子氏が、籠池氏の求めに応じ、国有地の売買予約付き定期借地契約について財務省側に問い合わせた内容の文書を、こう切り捨てた。

 民進党の福山哲郎議員は「総理夫人が秘書を使って役所に問い合わせることは、口利きという。結果は関係ない」と指摘したが、首相はゼロ回答を理由に「私の妻が関与したことには全くならない」と反論。しかし、谷氏が文書で「15年度の予算措置ができず、16年度で行う方向で調整中」と回答した工事費の立て替え払いが、年度早々の昨年4月6日に支払いがあったことも判明。スピード感の背景は何か。首相の答弁は、やや説得力に欠けていた。

 首相は、籠池氏の証人喚問について「密室の問題など反証できないことを並べ立てられ、事実に反することが述べられた。悪意に満ちている」と一方的に主張。100万円の寄付も否定したが、その根拠となる夫人の証言は23日夜、フェイスブックでの反論だ。証人喚問で話した籠池氏とは、言葉の重さが違う。

 自民党は籠池氏が夫人から「口止めのようなメールもあった」と証言したことを受け夫人と諄子氏のメールを公開。昨年6月4日から今年3月16日までで、それより前は「妻の携帯電話が水没した」(首相)とし、示されなかった。

 今年2月の問題発覚以降、文面には険悪な空気が漂う。今月8日は、「3奥(億)5000万足りません」とする諄子氏に、夫人は「祈ります」と戸惑った様子。今月16日、夫人の「100万円の記憶がないのですが」に、諄子氏の返答はない。首相は「正直に公開した」と述べたが、社民党の福島瑞穂氏は「メールでは講演料について否定していない」と指摘した。

 新たな「籠池爆弾」を受け、昭恵夫人の説明は不可避だ。福山氏は「籠池氏だけが土俵上で証人喚問を受けた。(フェイスブックで反論した)夫人を同じに扱うわけにいかない。まだ桟敷席、一般のお客さんの席にいる」と大相撲に例えた。「土俵の外で言っても国民は納得しない」と批判したが、首相、自民党は拒否する構え。「アッキー隠し」が続く。【中山知子】