だれにも看取(みと)られることなく息を引き取り、その後、相当期間放置される孤独死。2025年には国民の3人に1人が65歳以上になると言われる。超高齢化社会に伴い、孤独死は全国的な問題になっている。

 鋭い視点で斬り込むMBSテレビのドキュメンタリーシリーズ「映像’18」。今回は「ローズアパート~ひとつの老いのかたち~」と題したドキュメンタリーを25日深夜1時15分(関西ローカル)から放送する。京都市内の古いアパートで暮らす高齢者たちの姿を約2年間、追いかけた。人とのつながり、支え合うことの大切さを問いかける。

 京都観光の人気スポットの清水寺の近くにひっそりとたたずむ「ローズアパート」。築50年以上の木造アパート2階建て。長い廊下に面して1Kの部屋が並ぶ。このアパートには7世帯が暮らす。

 倉田幸八さん(94)は大阪市西成区のあいりん地区で日雇い労働で生計を立てていた。年齢とともに仕事がなくなり、京都で路上生活を始めるようになった。路上生活者や独居老人を世話をする支援者と出会い、ローズアパートを紹介してもらった。住み始めて20年以上が過ぎた。

 「以前は本当に人生どうでもよかった。でも今は人の世話になった。この人たちを裏切ることはできない」

 いまの倉田さんは孤独ではない。

 アパートには住民が「コーヒー部屋」と呼ぶ一室がある。高道夫さん(81)、妻の初子さん(83)。道夫さんは元暴力団組員。服役した過去もある。

 「おはよう、コーヒーを一緒に飲まへんか」。道夫さんが毎朝、住民に声をかける。アパートの空き部屋になっている一室にそれぞれがお菓子を持ち寄るコーヒータイムが始まる。「倉田さん、最近、身体は大丈夫か」。道夫さんの呼びかけに倉田さんが笑顔を見せる。お互いを気づかいながら、その日の状況を確かめる。

 生活保護を受けている世帯、息子と絶縁状態の男性、何度もつらい別れを経験した女性…。それぞれがさまざまな人生を経て、ローズアパートにたどり着いた。ただコーヒー部屋では、過去は関係ない。

 同番組は支え合い、励ます住民の笑顔だけを伝えるわけではない。他人同士が支え合うことで生まれるあつれきも映し出す。

 内閣府の14年の調査では独居の半数近くが「孤独死を身近に感じる」と回答。会話の頻度が少ない人ほど、その割合は高かった。 ローズアパートに通い詰めた和田浩ディレクター(44)は「みなさん、けっこうざっくばらんでした」と振り返りながら「人と人がつながり、孤独死を自分たちで防ごうとしているところがある。何かを感じていただけるものがあれば幸せです」と話した。