ジャーナリスト伊藤詩織さん(33)が、誹謗(ひぼう)中傷のツイートに対して「いいね」を押され名誉感情を侵害されたとして、自民党の杉田水脈衆院議員(54)に220万円の損害賠償などを請求した訴訟の判決で25日、東京地裁(武藤貴明裁判長)は伊藤さん側の請求を棄却した。伊藤さんは同日、都内で会見を開き、佃克彦弁護士とともに控訴する意向を明らかにした。

伊藤さんは会見の中で、ツイッターやFacebookといった巨大なSNSプラットフォームが、インターネット上での誹謗中傷に対応していないことが「大変な問題」だと指摘した。加えて「(インターネット上に)世界があるのに、法がないようなもの。整っていないネット規制の立法化…スピード感を持って、やらなければいけないことは、たくさんある」と迅速な法整備の必要性を訴えた。

伊藤さんは杉田氏に加え、漫画家はすみとしここと蓮見都志子氏と、元東大大学院特任准教授でAIベンチャー企業代表取締役の大澤昇平氏についても、ツイッター上の名誉毀損で訴訟を起こし、東京地裁は両氏に損害倍署の支払いを命じている。そのことを踏まえ「一連のこと…3件、終わってみて考えるのは、やはり法律も追いついていない。その中で、皆さんはFacebook、ツイッターに、いくら払いましたか?」と問いかけた。

その上で「いろいろな研究、調べはありますが、道徳観、感情に訴える否定的、侮辱的で嫌悪感があるツイートはリツイートが13%増えたそうです。アルゴリズムがクリックバイト、ビジネスになっている。言ってしまえば、私に対しての誹謗中傷が、どこかの広告になって、お金が作られているかも知れない。それは、恐ろしいこと」と誹謗中傷のツイートがネットビジネスにつながっていると指摘した。

さらに「彼らは環境を汚しても、誰かを傷つけても何もしなくていい。表現の自由だったり、いろいろなことは言われますが、もし、そういう場を提供するのなら、こういった言葉や言論が削除されたとか、誹謗中傷に当たると提示し、シェアしていかないと、何も変わらない」と大手SNSプラットフォームに対し、対策をするよう重ねて訴えた。そして「なぜ(SNSを)ただで使えるのか…ビジネスになっていると我々も考えるべき」とSNSユーザーにも呼びかけた。

会見の最後には「本当は今日でピリオドを打ちたかった。まだまだ議論することがある…終わらないんだなという気持ち。『被害者ビジネス』という新しい誹謗中傷の言葉も出る。時間も、エネルギーも、言葉と向き合うのも大変。同じ道を通る人が出来るだけ少なくなって欲しい」と切実な思いを語った。その上で「これが、ただのネットいじめではなく、ビジネスになるのでは…これは個人間の問題ではない。皆さんにも一緒に考えてもらいたい。控訴審に至るかと思いますけど、新しい動きが出れば良いと願っております」と語った。