またしてもトラブル! でんめおやじことメディア戦略本部石井政己(57)がようやく晴れた9月25日、青葉ブルベ伊豆200に参加したのだが、あやうく遭難の危機に瀕した。後輪のタイヤがバーストしたのだ。超ラッキーなことにゴール直前だったが、これがもし伊豆の山の中だったらと思うと、ぞっとした。ついているのかいないのか…。

伊豆・山伏峠のピーク
伊豆・山伏峠のピーク

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【コース】湘南台・桐原公園〜熱海〜伊豆多賀〜山伏峠〜修善寺〜湯ヶ島〜国士峠〜冷川峠〜伊東〜熱海〜湘南台・桐原公園


青葉ブルベ伊豆300のコース
青葉ブルベ伊豆300のコース

 実はこのブルベの1週間前の18日に青葉ブルベ渡良瀬300を走る予定だった。ど平たんコースをどのくらいの時間で帰ってこられるのか。佐野ラーメンはうまいのか、森高千里の名曲「渡良瀬橋」は渡良瀬橋の歌碑で聞けるのかと楽しみにしていたのだが、天気予報は雨。7月の麦草400、8月の道志みち200と雨模様が続いていたこともあり、3回連続は勘弁ということで前日の夜にDNS(Do Not Start=棄権)をスタッフに連絡した。ところが、当日起きてみると雨は降っていない。その後も小雨が降った程度。しまった、行けば良かったと後悔しながら1日を過ごした。


 ところが今回のブルベのスタート地点でスタッフに聞いてみると「目的地は土砂降りで、地獄だったみたいですよ」。自宅のある神奈川はほとんど降らなかったが、北関東はひどかったようだ。行かなくて正解だった(^o^)


 ただ、ここのところの雨続きで自転車にはほとんど乗れていない。7月、8月はブルべでしか自転車に乗れていないし、9月も上旬に100キロほど走っただけ。10月の600キロへの準備としても渡良瀬300は走りたかったのが本音だった。


 当初は雨マークもついていた25日だが、直前になって晴れマークがつき始めた。ようやく自転車に乗れそうだ。午前3時半ごろに起床し、13キロ先のスタート地点である藤沢・湘南台の桐原公園へ自走で向かう。前回のブルベで外れたサドルバックはブラケットを新しくしてちゃんと付いている。タイヤも前後をローテーションさせ、後輪の山もしっかりある。もしもの時のためにレインウエアもサドルバックに入れた。替えのチューブも3本用意した。


 今回のコースは2年前にも走っている。その時は山伏峠を下っている時にリアのシフトワイヤーが切れ、残り140キロ、峠2つをインナートップ固定で走る羽目になった。「修行ですか?」なんて聞かれながらも、上りはすべてをダンシングでしのぎ、ゴール後はもーへろへろ。2度とあんなつらい思いはしたくない。今回は1カ月前にシフトワイヤーを交換済み。今日こそ、山伏峠を下りてからの田舎道が気分よく走れるに違いないぞ。


 準備は万端。さあ、リベンジ! …のはずだったんだけどねぇ。


スタート前の湘南台・桐原公園
スタート前の湘南台・桐原公園

 午前6時前に桐原公園をスタートし、最初は二十数名の大トレインの後方で走る。参加者が43人なのでほぼ半分がここにいることになるのだが、それにしては速すぎない? 気がつくと時速34キロとか。国道1号に入ると徐々に信号でちぎれ始め、やがて3人のトレインの最後方となったのだが、これも気がつくと時速30キロ超え。ちぎれそうだ…。


湘南銀河大橋で相模川を渡る。前方左には富士山
湘南銀河大橋で相模川を渡る。前方左には富士山

 早川口を左折して国道135号に入ってしばらくすると、路面が思い切り濡れていた。霧雨も降っているようだ。天気予報は徐々に晴れてくると言っていたが、ウソだったのか。また雨かよ…。うんざりしながらPC1へと滑り込む。


【PC1 42・3キロ ローソン西湘江之浦店】午前7時40分(貯金1時間26分)

 ※(2年前=42・2キロ ローソン西湘江之浦店 午前7時36分)


 前回とは国道1号へのルートが少し違うので距離で100メートルほど長いようだが、時間的にはあまり変わっていない。


 トイレは混んでいたのでスルーし、ポカリスエットとおにぎり1個を補給し、サドルバックにレインカバーを付けてリスタートした。


 走り始めてしばらくすると後輪が回転するたびにごつん、ごつんと振動するようになってきた。ちょうど真鶴駅の手前付近。パンク? いや、しばらく走っても空気が抜ける様子はない。なにか異物が付着してそれが振動の元になっているのか。確認した方がいいかなと思いながら走っていると、気のせいか振動があまりしなくなったようなので「ま、いいか」とそのまま先へ進むことにした。


 湯河原へ入ると、うれしいことに路面は完全に乾いてきた。真鶴付近だけひと雨降り、上がった直後にそこを通過したようだ。ラッキー♪


熱海・伊豆山への上り。路面もほぼ乾いてきた
熱海・伊豆山への上り。路面もほぼ乾いてきた
熱海・お宮の松
熱海・お宮の松

 熱海に入り、またごつんごつんと振動がするようになったので、乗ったままタイヤを見た。驚いた。ゴム部分(トレッド)がはがれ、中身(ケーシング)がむき出しの状態になっていたのだ。これでは、いつバーストしてもおかしくない。前後輪のローテーションで入れ替えたばかりで、まだ山はたっぷりあるのに。ついてない。


ゴム部分(トレッド)がはがれ、中身(ケーシング)がむき出しになった
ゴム部分(トレッド)がはがれ、中身(ケーシング)がむき出しになった

 さて、残りは140キロ。どうしましょうか。


 古タイヤの切れ端をチューブとの間に入れるという手があるが、あったけなぁ。ちょっと前まではサドルバックにいれていた気がするが、これまで1度たりとも使う機会がなかったので最近は入れてないような気がする。あったところで、せっかく晴れて気持ち良く走っているのに、ストップして作業するのが面倒だな。それにこれまで2度ほどこういう危機になったことはあるが、30〜40キロぐらいは無事に走れている。最悪、バーストしたら1000円札でフタをして走ればいいか(話に聞いただけで、やったことないけど)。


 「ま、なるようになるさ。とりあえず修善寺駅までは持つだろう」という超楽観的な考えに落ち着き、先へ進むことにした。


 山伏峠へのアプローチである、約65キロ地点の伊豆多賀にはあっという間に着いた感じだった。ブルベを何度も走ると、距離感が破壊されるからねぇ。


 国道135号を離れ、コンビニの裏から米穀店の先を右折して県道80号へ入る。東海道線のガードをくぐると、住宅街だというのにこう配15%以上はあろうかという激坂がいきなり始まり、それが延々と続く。シッティングでは勝負にならず、渾身のダンシングでぐいっ、ぐいっと体重をかけて踏み込み、ゆっくりゆっくり上っていく。時速は5キロ。さすがにこのスピードではバーストはしないだろう。


東海道線のガードをくぐると激坂が始まる
東海道線のガードをくぐると激坂が始まる
住宅街の間の激坂
住宅街の間の激坂

 途中でやや楽な区間がありシッティングでしのげたが、それもほんのわずか。ほかの道が合流してくる付近から再び激坂が始まり、それがピークまで続いた。距離5キロで海岸線から一気に500メートルを上る、平均こう配10%の壁だ。この頃には日差しも出てきて、肌が焼けるような暑さになった。汗びっしょりで黙々と上っていく。


激坂のため、まっすぐ上れない
激坂のため、まっすぐ上れない

 蛇行しながら上っているブルベライダーもいたが、1メートル進むのに10メートル漕がなくてはならないのは非効率。この坂で3人に抜かれ、1人を抜いたが、その1人というのは蛇行して上っていた人だった。


 ただ、きついとは言っても、明神峠ほどではなく、何とかぎりぎりで耐えられる坂。それに2年前に上ったばかりなのでコースを覚えているのも強み。前回は足がつりそうになったが、今回は時折シッティングをまじえながら、多少の余裕を持って上ることができた気がする。時速は5〜6キロだけどね。


時速5キロで激坂をのぼるでんめおやじ(青葉スタッフMさん撮影)
時速5キロで激坂をのぼるでんめおやじ(青葉スタッフMさん撮影)
海が見え始め、視界が開けてきた
海が見え始め、視界が開けてきた
青空へ向かう激坂
青空へ向かう激坂
山伏峠のピーク手前
山伏峠のピーク手前

 山伏峠に到着したのは午前9時36分。前回は9時17分。あれ? 20分も遅い。おかしいなぁ。今回の方が速いと思ったのに…。


山伏峠のピーク
山伏峠のピーク

 ここまではバーストもせず無事にこれたが、危険性が一番高いのがダウンヒルだと思っていた。運を天に任せて下り降りる。前回、シフトワイヤーが切れた場所も無事クリア。悪夢の場所を通り過ぎたことで、何の根拠もないがうまくいきそうな気がしてきた。


 途中から反対車線を十数人の自転車乗りが、一定の間を置いて通り過ぎるようになった。何かイベントでも行われているのだろうか。後で調べてみると、「ライド&ライド狩野川2016」のロングライド狩野川80kmコース(国士峠越え)」だったようで、我々とは逆から国士峠を上っていたようだ。


 修善寺駅前を通過し、左折したらすぐにPC2と記憶していたが、全然違っていて、微妙な上りが10キロほど続き、スピードが乗らないいやな区間だった。途中でこう配9%の坂もあり、これを前回はインナートップのまま走ったはずだが、全く記憶にない。


【PC2 94・1キロ セブンイレブン天城湯ケ島店】午前10時42分(貯金1時間34分)

 ※(2年前=94キロ セブンイレブン天城湯ケ島店 午前10時39分)


 国道414号にあるPC2には午前10時42分に到着。前回は午前10時39分。山伏峠で20分遅れだったが、ここでほぼ同じになった。といってもばん回したわけではなく、前回は切れたシフトワイヤーを何とかできないものかと何度がストップしており、それで追いつけたのだろう。


 PC1から貯金がほとんど増えていないこともあり、ホットドッグ、朝バナナ、アクエリアスを慌ただしく補給してリスタート。すぐに湯ヶ島宿の信号があり、ここで左折するのだが道があまりに細く「これでええんかい?」というような感じ。実際、ちょっと先にスタートしたブルベライダーは直進してしまった。大声で呼びかけたが気がつかずそのままいってしまったのだが、この人には上りの途中であっさり抜き返された。


 国士峠へ向かう道にはイベントの係員が立っており、下ってくるイベント参加者に対してスピードを落とすよう注意をうながしていた。逆に上っているブルベライダーに対しては声援を送ってくれた。最後尾とは国士峠手前ですれ違い、一緒に下山してきたイベントの女性スタッフが「頑張ってくださーい」と声をかけてくれた。


林の中を国士峠へ
林の中を国士峠へ

 国士峠は湯ヶ島宿から約5キロ、平均こう配6%の坂。インナートップ固定になった前回は3〜4度歩いている。確かにきついところが何カ所かはあり、何度か足がつりそうになった。山伏峠制覇に全身全霊を傾け、すでに足は悲鳴をあげそうになっていたが、ここでついにギブアップか。右も左もダメっぽい。ゆっくり回して、だましだまし上っていくしかない。必死に足をなだめながらインナーローでよろよろ上っていると、いつの間にか道が下り始めた。しまった。ピークに気がつかなかった。周囲を見渡す余裕もなかったようだ。


 ここからは気持ちのいい、まさにブルベという田舎道を10キロほど下る。しかし、前回はシフトワーヤーが切れインナートップ固定、今回はバーストの危機と、ともに心配事を抱えてのライド。来年もこなきゃいけないかな。


国士峠から下っている時、左手にちらりと富士山が見えた
国士峠から下っている時、左手にちらりと富士山が見えた
こういう田舎道を走るのは気分がいい
こういう田舎道を走るのは気分がいい
田舎道は続く
田舎道は続く

 冷川の交差点から上りがきつくなる。冷川峠までは3キロ、平均こう配は5%。緩やかな坂だが、つりそうな足に耐え、それなりに苦しみながら、午後0時21分にピークに到着。ここは標識もあり、道もどーんと下っているので分かりやすい。前回は0時12分。あれ、インナートップの方が速い。インナーローで楽をしてはいけないということか。


冷川峠のピーク
冷川峠のピーク
冷川峠のピーク
冷川峠のピーク

【PC3 125・2キロ セブンイレブン伊東湯川店】午後0時48分(貯金1時間38分)

 ※(2年前=137キロ ファミリーマート ナカスイ熱海下多賀店 午後1時12分)


 冷川峠から5キロほど下ると、海岸線を臨む最終PCとなる。


伊東の最終PC
伊東の最終PC

 ごつんごつんと回転するたびに振動がするのは相変わらずだが、ここまで無事に来られたことで、バースト危機の事はほとんど忘れていた。根拠はないがもう大丈夫と思い込み、いなり寿司&おかずセットをパクついてリスタート。ゴールまでもうPCはなく、残りは75キロ。一気に走るにはちょっと長いかな。ただ、休むとタイムが前回より遅くなりそうだ。ともかく行けるところまで行こう。


 順調に走っていたのだが、足がつったせいか、両足の膝の裏に痛みを感じるようになってきた。特に右足はひどく、平塚付近から曲げるたびに激痛が走るようになった。小田原までは何とか時速30キロ巡航ができたが、時速は23キロ前後まで落ち込んだ。コーラ休憩もしたくなったが、休んでしまうと10時間台でのゴールが微妙になりそうだったので、痛みに耐えながらほぼ左足だけで回し続けた。


 最後のあたりは時速20キロほどしか出なくなったが、何とか前回並みの10時間30分前後でゴールできそうだ。やれやれと思って、ゴールまで600メートルとなる、最後の交差点の石川和泉原の信号を左折した瞬間だった。


 ぱぁーーーん!!!


 いきなりの銃声のような強烈な爆発音。後続の車も驚いてストップしたよ。ここでバーストするかよ。あと600メートルだぜ。いや、逆に超ラッキーだったかも。これが山の中だったら何キロも歩く羽目になったかもしれない。最悪、遭難していたかも…。600メートルで済んで良かった。


バーストしたタイヤ
バーストしたタイヤ

【ゴール 203・4キロ 桐原公園】午後4時45分(貯金2時間45分)

 ※(2年前=203・3キロ 桐原公園 午後4時25分)


 自転車を600メートル押し歩いてゴール。こんなことは初めてだ。時間は10時間45分。インナートップで走った前回は10時間25分。今回は最後は歩いたが、それでも前回の方が速い。当然ながら重いギアが踏めるなら、それで走った方が速いということか。


 前回はシフトワイヤーが切れ、8月の道志みち200ではサドルバックが半分外れた。何かが起こるブルベだが、おかげでブログネタには事欠かない。内心はほくそ笑みながらバーストしたタイヤをバシバシ撮影していたら「そろそろゴールの受付を」とうながされちゃった。


 ところでどうやって自宅へ帰ろうか。タイヤはダメになったので自転車には乗れない。輪行袋はない。自宅までは13キロ。歩くと2時間以上かかる。主婦業の次女に迎えにきてもらうか。しかし、8カ月の孫がいるので出発に準備がかかり、自転車も車に乗せることはできない。あるいはタイヤを自宅から持ってきてもらうか。しかし、ロードのタイヤがどれか分かるだろうか。


 悩んでいたら…


「タイヤ、ありますよ」。


 おお、ここで天の声。このブルベを主催した青葉代表のKさんがタイヤもポンプも持っていたのだ。ありがとーー! 歩かないで済んだよ。


青葉代表のKさんがタイヤを譲ってくれた
青葉代表のKさんがタイヤを譲ってくれた
受け付けの横でタイヤとチューブの交換作業
受け付けの横でタイヤとチューブの交換作業

 タイヤを交換し、Kさんに感謝しながら自走で帰宅。午後7時にはビアの人に(^o^) すると仕事を終えて帰宅してきた長女が開口一番「お父さん、何本飲んだの? 顔真っ赤じゃない」。「いやいや日焼けだよ〜ん」。


 しかし、大磯のユーキャンの前を通っているのになんでタイヤを買わなかったんだろうね?


 さて、次のブルベは10月の天城越え600。絶対に何も起こらないでね。【メディア戦略本部 石井政己】