日本でも多くの自治体が「殺処分ゼロ」を目標に掲げるなど、近年はペットの殺処分数が減少していると言われていますが、まだまだたくさんのペットが捨てられて悲しい末路を辿っています。日本ではペットショップに並ぶかわいい純血種の子犬や子猫を求める人が多く、悪徳ブリーダーや多頭飼育崩壊などが度々ニュースなどでも取り上げられていますが、ここロサンゼルス(LA)は2003年から殺処分ゼロシティをスローガンに掲げ、様々な取り組みが行われています。その一環としてLAでは、ペットショップで犬や猫の生体展示販売が禁止されており、犬や猫を飼うにはシェルターと呼ばれる保護施設からアダプト(里親になる)するのが一般的です。

LAの街に掲げられているシェルターのビルボード。週末には家族連れで賑わいます
LAの街に掲げられているシェルターのビルボード。週末には家族連れで賑わいます

 シェルターには市営と愛護団体など民間が運営するものがあり、譲渡方法や料金には多少の差があります。LAには市が管轄するシェルターは6か所あり、2002年まで年間約5万匹もの動物が安楽死させられていたと言われています。その翌年、市は殺処分ゼロシティを公約に掲げ、2016年には目標には達していないものの殺処分率は約12%までに低下。市だけでなく、ボランティアや保護活動をする民間の団体、そして実際にペットを引き取る人々の努力が実り、保護された犬猫の約8割が新しい家族の元に引き取られています。殺処分数は減っているとは言え、保護される動物は後を絶たずどこのシェルターも満室状態であることに変わりはなく、各シェルターでどんな動物が何匹早急に里親を必要としているかなどの情報も公開されています。シェルター以外にも、大手ペットショップなどでも定期的に犬や猫の譲渡会が行われており、ペットスマートが年に数回行っている「ナショナル・ペット・アダプション・ウィークエンド」と題した大規模な譲渡イベントでは、今年2月も3日間で約3万匹の犬猫が里親の元に引き取られています。

ペットスマートの店内で里親を待つ猫たち。これまでペットスマートが里親に出したペットの数が掲げられています
ペットスマートの店内で里親を待つ猫たち。これまでペットスマートが里親に出したペットの数が掲げられています

 そんな中、2019年1月1日からはカリフォルニア州でもペットショップで犬や猫、うさぎの販売が禁止される法案が執行されることが決まりました。これにより、カリフォルニア州のペットショップでは、保護された犬や猫、うさぎのみしか取り扱うことができなくなります。この背景には、充分な食事や水を与えずに非衛生な状態で犬猫を過剰繁殖させるパピーミルやキャットファクトリーと呼ばれる悪徳な繁殖施設を減少させる狙いがあり、より多くの保護動物が里親の元にもらわれることにも期待がもたれています。

地元の保護団体と一緒に大規模な譲渡イベントを行うなど、大手ペットショップも犬や猫の保護に一役買っています
地元の保護団体と一緒に大規模な譲渡イベントを行うなど、大手ペットショップも犬や猫の保護に一役買っています

 LAではシニアの犬や猫、身体的なハンディのあるペットを引き取る人も少なくなく、うちの近所でも3本足の犬を2匹引き取って育てている人もいますし、野良猫が産んだ子猫を里親に出すまでの期間自宅で世話をするフォスターと呼ばれるボランティアをしている人もいます。また、シェルター側も一緒に捨てられた動物やシェルター内で仲良くなって引き離すことが難しい犬や猫を一緒に引き取ってくれる人への割引、シニアの人が7歳以上のシニア動物をアダプトすると費用が半額になるなど様々なサービスも行っており、引き取り手が少ないと思われる動物たちにも里親を見つける努力をしています。また、民間の保護団体ではお試し期間を設けていたり、引き取ったペットが再び捨てられないように事前に家庭環境を調査するなどの取り組みも行われています。動物愛護意識の高いLAの人々や支援企業の声が反映されたカリフォルニア州のペット販売を規制する法案は、今後全米各州にも広がって行くことが期待されています。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。日刊スポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)