インスタ映えを意識したポップなデザインのボトルも多く、サングリアやグレープフルーツやライムなどフルーツフレーバーも多く売られています
インスタ映えを意識したポップなデザインのボトルも多く、サングリアやグレープフルーツやライムなどフルーツフレーバーも多く売られています

 ワインの産地として知られるカリフォルニアではお手軽な値段でおいしいワインを楽しむことができますが、ここ数年はなんとワイングラスもワインオープナーもいらない缶入りワインがブームになっています。ワインと言えばボトルに詰められたものが一般的で、缶入りワインなんて邪道と思っている方も多いと思いますが、2018年は缶入りワインがワシントン・ポスト紙のトレンドキーワードにあがるほどの人気で、新しい物好きなミレニアル世代を中心に売り上げが急上昇しています。2年前のUSAトゥデイ紙の記事では、缶入りワインの市場が急成長し、前年比で売上が125.2%も伸びていると伝えていましたが、最近はリカーストアーやスーパーマーケットでボトルワインと並んで様々な種類の缶入りワインを見かけるようになりました。

六角形の箱に4缶が入って売られているミニ・ブラン・ド・ブランは、女性に大人気(公式HPより)
六角形の箱に4缶が入って売られているミニ・ブラン・ド・ブランは、女性に大人気(公式HPより)

 缶入りワインは、オーストラリアの「バロークス」が世界初となる缶入りのワインを製造したことで知られていますが、カリフォルニアではフランシス・コッポラ監督が愛娘の映画監督でデザイナーのソフィア・コッポラの結婚祝いに造った「ソフィア・ブラン・ド・ブラン」の缶入りスパークリングワイン「ミニ・ブラン・ド・ブラン」がブームの先駆けと言われています。2009年に発売されたピンク色のスリムな缶に入ったワインは187mlというお手頃サイズで、飲みたいけどボトル1本は空けられないと言う女性にぴったりで、現在までロングセラーとなっています。

ジュース感覚でワインを飲むのが新たなトレンド。赤・白・ロゼにスパークリングとお好みのワインを少量ずつ楽しめます
ジュース感覚でワインを飲むのが新たなトレンド。赤・白・ロゼにスパークリングとお好みのワインを少量ずつ楽しめます

 最近急成長している注目の缶入りワインと言えば、オレゴン州で2005年に開業した家族経営のワイナリー「アンダーウッド」が販売する缶入りワイン。ピノ・ノワールとピノ・グリという赤・白の他、スパークリングやロゼもあります。アンダーウッドの缶入りワインは、缶ビールやコーラなど缶ジュースと同じ375mlというサイズが特徴で、これまでの缶入りワインよりも大きめの容量で、よりお得感と気軽さをアピールする戦略が功を奏したと言われています。おひとり様でちょっと1杯飲みたい時にぴったりのサイズなのはもちろん、ボトルワインのように気取らずに飲めるのでパーティーやアウトドアなどのレジャーシーンでも重宝されています。また、カリフォルニアワインなら「アロイ・ワイン・ワークス」や有名ソムリエのジョルダン・サルチート氏が16年に造り始めたワインクーラー「ラモラ」などもメディアで度々取り上げられる人気ブランド。ラモラはアルコール度数が低く、甘すぎない新感覚のテイストで人気ですが、最近ではコーヒーフレーバーの缶入りワインも登場するなど、カクテル感覚で楽しめるものも続々と登場しています。

カプチーノ風味のシャルドネ。他にもエスプレッソコーヒー風味のカベルネ・ソーヴィニヨンもあります(フレンズ・ファン・ワインの公式HPより)
カプチーノ風味のシャルドネ。他にもエスプレッソコーヒー風味のカベルネ・ソーヴィニヨンもあります(フレンズ・ファン・ワインの公式HPより)

 値段は1缶5~7ドル前後とお手頃ですが、気になるのはやはり「缶入りワインの味ってどうなの?」と言うことだと思います。この点に関してはブラインドテイスティングをしてもボトル入りとの違いがほとんど分からないと専門家は言っており、特にアルミのにおいや味の違和感はまったくなく、普段ちょっと飲むには充分な美味しさです。缶詰め技術も年々進化しており、アルミの風味が中身に移らないようにするコーティングが施され、真空状態になるので空気による酸化を防ぐことができるとも言われています。ただし、通気性のあるコルクと違ってアルミ缶は寝かせても熟成はしないので、長期保存には不向きと言う欠点はありますが、そんなことよりもワイングラスを使っておしゃれにワインを楽しむのはちょっと敷居が高いと感じる若者にとっては、ビールのように缶のままゴクゴクと飲めてしまう缶入りワインは日常の様々なシーンで気軽に楽しめる飲み物として認知されているようです。アメリカでは缶入りだけでなく、テトラパック入りのワインなども販売されており、飲み残したワインの保存に悩むことなく、飲みきりサイズをより手軽に味わうと言うのがワインの新しい楽しみ方となりつつあるようです。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。日刊スポーツ・コム「ラララ西海岸」)