冬だからシロギス。2016年の東京湾で主役になった獲物は、タチウオ、マダコ、スミイカ、マゴチ、アジなど数え上げたらきりがないが、その陰でひっそりとしていたのがシロギスだった。1年を通して狙えて、しかも20センチ前後の大型がヒットしてくる。潮温がようやく冷たくなってシロギスがますますおいしくなってきた。さあ、冬だからシロギス、ですよ!

 あれれ、シロギス、って夏の魚じゃないんですか?

 無理もない。シロギスは、俳句の季語では夏に当たる。パールピンクの魚体は、燃えるような夏の日差しにさらされながら、涼やかな音色を残すガラスの風鈴のようでもある。猛暑に似合う魚であることは間違いない。

 ただ、真冬のシロギスは潮温の冷たさに自己防衛で脂をまとうのか、胴まわりがしっかり、ぽっちゃりしていて、背開きにして塩をパラリとふって軽くあぶると「ジュワ~」と香ばしく焼ける。食感はふんわりとしながらも、しっかりかみごたえのある甘くコクの深い白身。大人なら日本酒にぴたりとはまって、止まらなくなってしまう。

 冬のシロギス、たまらないのだ。

 実釣は16日。最近、釣りに熱心な海洋環境専門家の木村尚(たかし)さん、釣り雑誌などで活躍する山口充さん、ワカサギからマグロまで何でも釣っちゃう釣り人の佐須智明さんとタコボウズ記者の「おじさん4人組」で出船。男だけなので、なんともむさ苦しく、かつ遠慮なくノビノビした釣りを楽しめた。

 「いやぁ~、引き味、たまらんですねぇ~」といきなり木村さんがシロギスをキャッチした。17センチの良型。底にオモリが着いた直後に「プルルン」。合わせがなくとも、シロギスが勝手に掛かってくれる。

 しばらくすると、仕掛けをひょいと投げた佐須さんが、2本のハリに2匹を食わせて、手元まで引き寄せた。「反応はビンビンきます。どこかの時間で食いは多少止まるだろうけど、これは1日楽しめちゃいますね」と、シロギスの魚影の濃さに自然と口元が緩む。

 山口さんも一荷。「胴付き仕掛けなのに上のハリに食いついてくる。シロギスは底ベタのイメージがあるから意外。個体がデカいから力強いもんね。この冬のシロギスは魔力があるなぁ」とごきげんだ。

 釣った場所は、シロギスの代表ポイントでもある中ノ瀬。東京湾の海中に南北に約11キロ続く水中島で、水深10~20メートルの浅場が東京湾のど真ん中にある。シロギスがどの季節でも点在するエリアだ。

 この日、海上では北からの風がやまず、さらに小刻みにウネリの入る潮況。それでもシロギスの活性は高かった。誰かにアタリがくると連発する現象が多発。大きい群れが散らばっているようだ。アタリが遠のくことがしばしばあったが、仕掛けを3メートルほど浮かして、また着底させるとすぐアタリがある。外道では、カナガシラ、トラギス、イシモチ、ハゼなど。

 釣果は全部まとめたので細かい数字は無視するとして、佐須さん70匹、山口さんが50匹、木村さんは30匹、タコボウズ記者20匹。しかも、サイズは大型ばかり。くれぐれも寒さ対策は万全に。冬のシロギスほど楽しくて、おいしい釣りはありませんよ。ぜひぜひ、東京湾へ。【寺沢卓】

 ▼船 山下橋「広島屋」【電話】045・622・8615。シロギスはエサのアオイソメ付きで7500円。出船が午前8時で納竿が午後3時。交通は、電車ならみなとみらい線の終着「元町・中華街駅」から徒歩7分。車であれば、首都高「新山下インター」で下車して、山下埠頭(ふとう)内の広島屋の専用駐車場へ。詳細は要電話確認。