プロの感覚のすごさを痛感した。21日の楽天戦(メットライフドーム)後のこと。クラブハウスの出入り口で選手を待っていると、西武山川穂高内野手(26)が出てきた。

 オープン戦は不振が続いていた。この試合も、3三振を含む4打数無安打。こういう時、何と声をかけるべきか。一瞬、ちゅうちょしたが、意外にも山川は明るかった。ニコニコ顔で口を開いた。

 山川 4打席目まではさっぱりです。でも、5打席目はニヤケが止まりませんでした。今まで、自分の思っていることと映像を比べても、全く一致していなかった。それが、最後の打席は合ったんです。

 具体的な中身は「打ったら言います」と伏せたが、フォーム的なことだという。「もう打ちますよ」と力強く言い残し、自主練習のため、室内練習場へ消えた。

 翌日の休養日を挟み、2日後だ。23日のDeNA戦の初回、山川は石田から左翼席中段へ特大の1発を放った。「もう打ちます」と言っていたのは、本当だった。翌日には左前打。オープン戦最終戦となった25日には左中間二塁打を放った。

 「ニヤケ」をもたらしたのは、中村の指摘だった。21日の最終打席に向かう直前、構えた時に体が投手側に開いていることを教えてくれたという。それを打席で戻したことで、球の見え方が去年と一緒になったという。「打ちに行く時、右肘が上がってバットが出ない原因になっていた」そうだ。構えを元に戻すことで、右股関節の「はまり」がよくなり、バットがスムーズに出るようになった。

 昨年9月から4番に定着。オフから「4番を打ちたい」と公言し、一からのレギュラー取りを誓った。苦しんだオープン戦だったが、最後に光が見えた。「フォームのことを考えずに、これで投手と勝負できる。自分と戦う時間がなくなりました」と頼もしかった。辻監督も「4番山川」で開幕を迎えるつもりだ。

 的確な指摘をした中村。それを受けて「もう打ちます」と言い、実際に次の打席で本塁打を打った山川。プロ野球選手には、技術に関して「これだ」と思える感覚があるのだということを、改めて感じた。【西武担当=古川真弥】