【クリーブランド(米オハイオ州)10日(日本時間11日)=四竈衛】右肘に違和感を訴え、15日間の故障者リスト(DL)入りしたヤンキース田中将大投手(25)は、復帰まで最短でも6週間を要することが、分かった。検査の結果「右肘内側側副靱帯(じんたい)の部分断裂」が判明した。現時点で「トミー・ジョン手術」と呼ばれる移植手術は回避し、最新の治療法やトレーニングなどで復帰を目指す方針が決まった。ただ、それでも回復しない場合は、手術に踏み切る可能性も残された。

 重苦しい発表だった。米国東部時間午後9時過ぎ。インディアンス戦の試合中、ニューヨーク滞在中のキャッシュマンGMによる緊急電話会見が始まった。日米報道陣が聞き入る中、同GMは田中の診察結果を説明した。「右肘靱帯の部分断裂。診察した3人の医師ともに手術は勧めなかった。断裂は小さいとの診断だった」。当面は手術を避ける方向で「リハビリには6週間かかる」。復帰は最短でも8月下旬になる見通しを口にした。

 前日9日、遠征先のクリーブランドからニューヨークへ戻った田中はこの日、シアトルへ向かった。同地で研究学会に出席中のヤ軍担当医、クリストファー・アーマド医師の診察を受けるためだった。同学会には全米中から整形外科の権威が出席しており、アーマド氏に加え、ドジャース担当医のエルアトラッシュ氏、メッツ担当医のアルチェック氏の医師3人が田中の右肘を診察した。その結果、3人が同じ所見を示し、すぐ球団へ報告された。

 キャッシュマンGMによると、部分断裂は「small

 tear(小さい裂け目)」で靱帯と骨の接着部分の1割程度とみられる。1月に受けた入団時のメディカルチェックで異常は見つかっておらず、同GMも「故障は(古傷ではなく)新しいもの」としている。

 今後はまず、細胞や組織の再生を促進する「プレートレット・リッチ・プラズマ(PRP)」と呼ばれる治療法を試みる。再生医療の1つで、血小板を集めて患部に注入することにより損傷部分の回復を促すという。この治療に、周辺部分の強化といったリハビリを連動させ、手術回避の道を探る。田中の部分断裂は初期段階で、効果が出れば今季中の復帰も可能となる。

 ただ、決して楽観はできない。キャッシュマンGMも「これが手術(の可能性)を除外するわけではない。リハビリがうまくいかなかった場合には手術も選択肢に入ってくる」と話しており、手術に踏み切る可能性は残っている。

 田中は今日11日にニューヨークへ戻り、14日にも同市内の病院で「PRP」の注射を打ち、本格的治療を開始する見込み。その後は、安静にしながら患部の反応次第で、次の段階へ進むことになりそうだ。順調に滑り出したメジャー1年目が、これで終わってしまうのか。まずは最新医療に願いを託す。

 ◆血小板

 血液に含まれる細胞成分の一種。血管が損傷した時に集合して、その傷口をふさぐ止血作用があり、血液凝固に重要な働きをする。血液に含まれる他の成分は、酸素の運搬を行う赤血球、体内に入った細菌や異物を処理して体を守る白血球などがある。<肘の靱帯部分断裂した主な選手>

 ▼和田毅(カブス)オリオールズに入団した12年4月に左肘を損傷。5月にトミー・ジョン手術を受け翌13年4月に実戦復帰した。

 ▼マット・ハービー(メッツ)13年8月に右肘に判明。14年開幕に間に合わせるため手術を行わずに自然治癒を目指したが、同10月に方針転換しトミー・ジョン手術。15年開幕からの復帰を目指すことになった。

 ▼イバン・ノバ(ヤンキース)14年4月に右肘に判明。同月にトミー・ジョン手術を受けた。

 ▼手術回避

 複数の米メディアは、右肘靱帯部分断裂で手術を回避した珍しい例として、アダム・ウェインライト(カージナルス)とアービン・サンタナ(ブレーブス)の両投手を挙げた。だが発症後も約5年投げていたウェインライトは11年にトミー・ジョン手術を受けている。