【ニューヨーク4日(日本時間5日)=四竈衛、水次祥子】右肘痛で故障者リスト(DL)入りしているヤンキース田中将大投手(25)が、ヤンキースタジアムでキャッチボールを再開した。血小板を使って組織の修復や再生を図るPRP注射と呼ばれる治療を受け、順調な回復が確認され、安静段階は終了。現時点で手術の可能性は低くなり、最短で9月上旬が見込まれる復帰へ向けて、次のステップへ進むことになった。

 7月8日のインディアンス戦以来、27日ぶりにボールを投げた田中は、いつも以上に穏やかな口調で話し始めた。「1つステップアップできたということで、ホッとしている部分と、これから距離、強度も上がっていくと思いますけど、まずは今日、第1歩かなと思います」。14日にPRP注射と呼ばれる最先端の再生療法を施して以来、3週間の安静期間が経過。1日には担当医の診断を受け、投球再開の許可を受けた。「投げる前までワクワクしてましたし、久しぶりにボールも投げられたので、いい時間が過ごせたと思っています」と、胸中を明かした。

 球団関係者によると、「第1歩」の初日はジラルディ監督、トレーナーが見守る中、ロスチャイルド投手コーチを相手にキャッチボールを行った。リハビリ選手は「早出」が原則とされていることもあり、報道陣受け付け開始前の午後1時半過ぎからアップを開始。約20メートルの距離で軽めの25球を投げたのをはじめクールダウンまで、約50球の試運転で感触を確かめた。練習後の会見では、変化球も投げたのかと聞かれ「そんなことやってたら、ぶん殴られてたと思います」と切り返して、笑いを誘った。

 今後は、肘の状態を確認しながら徐々に投球の距離を延ばし、遠投、ブルペン投球、フリー打撃登板など次の段階へ進んでいく。ヤ軍、田中とも復帰のメドを設定していないものの、順調なら9月上旬の戦列復帰が可能だ。その一方で、田中には楽観もなければ、焦りもない。「(故障を)繰り返しても仕方ない。中途半端に戻って迷惑をかけて、また離脱の形が一番最悪。しっかり治していい状態で上がれるようにしたいと思います」と話し、しっかり自分と向き合っている。まだ安心できる状態ではないが、今季中復帰が現実味を増したことは間違いない。