高く、大きな打球音がドームの天井に跳ね返った。広島新井は2回、先頭打者なら普段手を出さない初球を振った。「前回やられていた。思い切り狙っていこうと思った」。右腰が入り、下半身で回転。14号決勝ソロは右中間スタンドへ消えていった。

 勢いは止まらない。3回の第2打席では無死満塁で右犠飛。こちらも「少しこすった」と悔しがる特大飛球だった。5回には2死二塁から「言わない方がいいかもしれないけど、インサイドを待ってた」と体を回転させて左前適時打。緒方監督も「本当にすごいよね、新井さん。お手本のような打撃」と絶賛した。

 「今までとは違う感覚が、少しだけ出てきている部分はあります」。先週末の横浜での試合前、野球評論家に声を掛けられると、恥ずかしそうにそう答えた。この日の本塁打も「狙っているわけじゃないけど」と笑う右方向への打球。下半身で回転し「右に引っ張る」と表現する感覚。進化する39歳が打線を支える。

 3打点で今季84打点。リーグトップのヤクルト山田に並んだ。「そうなの? 全然知らなかった。気にしてないし気にならない。マジで気にならない」と笑顔。「打点を挙げられなくても勝てばいい」とも言った。最短の優勝へのマジック点灯は19日。広島は新井が導く。【池本泰尚】

 ▼新井が3打点を挙げ、今季84打点目。山田(ヤクルト)と並び、セ・リーグの打点トップに立った。新井は39歳。満39歳シーズンで打点王を獲得すると、セでは78年王貞治(巨人)の38歳を抜いて最年長となる(パは88年門田=南海、08年ローズ=オリックスの40歳)。2回には先制本塁打。先制、同点、勝ち越し、逆転などの殊勲安打は今季25本目で、筒香(DeNA)と並んでリーグ最多となった。