悩める主砲のバットが連敗を止めた。延長10回2死一、二塁、日本ハム中田翔内野手(28)が今季1号となる決勝3ラン。チームの連敗を10で止めた。今季は4月5日のロッテ戦(ZOZOマリン)で1打点を挙げただけと不振を極めていたが、この男が打てばチームも勝つ。

 待ちわびた歓喜の中心に、苦しみ抜いた中田がいた。2-2の延長10回2死一、二塁。ソフトバンク森の外角へ落ちる変化球を左翼テラス席まで運んだ。勝負を決定付ける今季1号3ラン。三塁側ベンチで、ほえて待ちかまえる栗山監督と力強く右手を交わした。「本当に苦しい日々が続いた。一番は勝てたのがよかった」。13日以来の勝利で、連敗を10で止めた。

 勝ちたかった。12年ぶりの10連敗を喫した前日26日は、栗山監督の56歳の誕生日だった。中田は言った。「一番苦しいのは、誰かって言ったら監督」。右内転筋筋挫傷のため、13日に出場選手登録を抹消された。この翌日から連敗が始まった。中田は2軍本拠地の千葉・鎌ケ谷で練習を続けた。降格理由は「故障」ではなく「不振」とされたため、都内ホテルの宿泊費や移動費は自腹だった。「自分のしょうもないけがで迷惑を掛けた。すごく反省している」。

 23日の復帰後も勝利に貢献できなかった。前日までの3試合で12打数1安打。この時点で打率1割6分7厘と低迷。推定年俸2億8000万+出来高の男が「1億くらい球団に返そうかな」と、自虐気味につぶやくほどだった。

 この日は違った。6回までバンデンハークに無安打に抑えられていたが、7回先頭でチーム初安打となる左中間二塁打を放った。そして決勝弾。チームの危機を救う活躍だった。ただ、栗山監督は「翔は普通です」とひと言で片付けた。それだけ信頼している。

 中田は言った。「これを本当に良いきっかけにしたい。とにかく今日は勝てたことだよ」。待ち続けた1勝の重みをかみしめ、再起へ歩き出した。【田中彩友美】