台湾の「大王」が勝利の立役者になった。日本ハム王柏融外野手(25)が、「日本生命セ・パ交流戦」の巨人1回戦(札幌ドーム)で、本拠地初アーチとなる決勝2ランを放った。3-3の同点に追いついた7回2死一塁、左腕高木から右越えの3号本塁打。1日オリックス戦以来の1発を含む3安打猛打賞で、1分け挟む3連勝、パ・リーグ&交流戦の首位死守に貢献した。

勝利へのいちずな思いが、実った。同点に追いついた終盤7回。王柏融が1発で勝利を引き寄せた。2死一塁。「狙い通り、甘いところを打った」と、ど真ん中への直球系138キロを打った。前のめりに体勢を崩されながらも、打球は右翼席ギリギリに吸い込まれた。決勝の3号2ラン。札幌ドーム初アーチで「今日の本塁打は、私にとって記念」と、照れながら喜んだ。

チームメートの姿に発奮した。直前の打者・中田が同点打。「どうしても塁にいる走者を、かえそうと思った」。先発有原の粘投には「野手として、ファイターズのために点を入れたい」と気持ちは高まった。本塁へかえってくると、中田からほおを軽くたたかれた。手荒い祝福も心地よかった。「チームの勝利をもたらすために、頑張りたかった」。チーム唯一の3安打猛打賞。栗山監督は「遠くに飛ばせる、ボーロンの良さが出た」と感心した。

クールな表情の陰で、努力を惜しまない。プロ野球の中継アプリを、スマートフォンにダウンロード。5月中旬、左太もも裏痛でリハビリ中には、リーグ問わず他球団の試合も熱心に研究していた。2軍で調子の良い選手がいれば「何の球種を狙っていたの?」と聞いて回っていたという。打率4割超えを2度など台湾球界をけん引した「大王」は、日本では謙虚に頭を下げ、新天地で慣れようと励んできた。

この日は台湾時代のチーム・ラミゴが企画した観戦ツアーで約20人が訪れた。王柏融は「分からなかった」と苦笑いも、巨人の陽岱鋼との“台湾対決”が目玉とされたツアー。陽岱鋼の出場はなく、王柏融は台湾ファンの声援を一身に浴びた。お立ち台では「札幌のみなさん、応援ありがとうございます」と日本語を披露。台湾と日本の期待を、力に変えていく。【田中彩友美】