佑ちゃんが「ハンカチ王子」で鳴らした時代にカムバックした。日本ハム斎藤佑樹投手(26)がキャンプ初日の1日、強烈デモンストレーションを敢行した。ブルペン入りし直球を主体に66球。後方からチェックし、辛口が売りの栗山監督が脱帽する仕上がりを披露した。指揮官は早実でブレーク時のような力感満点のパフォーマンスと絶賛の嵐。激戦の先発ローテーション争いに名乗りを上げた。

 高音が響く。静まり、緊迫感が満ちたブルペン。斎藤が小気味良く右腕を振った。捕手のミットを力強く弾いた。1軍投手陣で一番乗りでの投げ込みは、心地よく66球。栗山監督をはじめ首脳陣、復活を願う球団幹部も捕手の後方に集結した。視線も気になる環境下で、外角低めを中心に精度も高く、力強さもあった。「まだ投球練習なので分からない」と慢心はないが、手応えといえる確信があった。「オフに練習してきたことはできていた」と言えた5年目の船出だった。

 あるシーンがプレーバックした。見入った栗山監督は感傷に浸り、回想してしまうほどだった。9年前の06年。ニューヨーク州のクーパーズタウン。米国の野球殿堂がある街での衝撃が、指揮官の脳裏へとよみがえった。早実のエースとして全国制覇した直後の9月。高校日本代表の背番号1を背負う斎藤を、キャスターとして初めての取材機会、出会いでもあった。

 米国の球場らしくバックネット裏、日本の球場よりも至近距離から球筋を目に焼き付けた。「ハンカチ王子」で名をはせていたころ。栗山監督は「クーパーズタウンで見た、あの頃の佑樹みたいだった。体の力がボールに伝わっている。そんな感じが、今日もあった」と姿を重ねる仕上がりだった。キャンプ初日。先発陣の当落線上だった斎藤への見方も、変わった。「佑樹がああいうボールを投げると、いろいろなことを考えないといけない」。

 初の実戦登板予定は8日紅白戦。勝負をかける今季の第1関門になる。斎藤は「周りを見るより、自分の投球ができれば」と落ち着いていた。栗山監督が断言した「ハンカチ王子」を今、体現できれば希望に光はともる。【高山通史】

 ◆斉藤の06年

 夏の甲子園で、田中将大(ヤンキース)擁する駒大苫小牧を下し、早実を初優勝に導いた。延長15回引き分け再試合となった決勝を合わせ、準々決勝から4日連続完投。4戦連続2桁三振を奪い、春夏通算104奪三振(歴代2位)も記録。その後、日米高校親善野球で全日本高校選抜の一員として背番号1を背負った。兵庫国体では29年ぶり2度目の優勝で、史上8校目(9度目)の夏の甲子園、国体の2冠。決勝では駒大苫小牧を1-0で下し、甲子園に続き田中に投げ勝った。