先日、25年前期のNHK連続テレビ小説「あんぱん」の柳井嵩(やない・たかし)役に起用された北村匠海(26)の発表会見を取材した。会見中の北村の発言には、自身のモットーがつまっていた。

今作は「アンパンマン」の生みの親、漫画家やなせたかし(本名・柳瀬嵩)さんと小松暢さん夫妻の半生がモデルとなる。戦前、戦中、戦後の時代を生き抜き、“逆転しない正義”を体現した「アンパンマン」を生み出すまでの愛と勇気の物語を描く。ヒロインとしてやなせさんの妻にあたる朝田のぶ役を今田美桜が演じる。

制作統括を務めるNHKの倉崎憲氏(36)は柳井嵩役に「真っ先に思い浮かんだのが僕は北村さんだった」と明かした。起用理由は北村がボーカルを務めるDISH//でのライブMCの一人語りがきっかけだという。

北村は「『10分後、命を落とすかもしれない。だから今どう生きるかということを連続して行うことが、その日々を全うすることだ』というのが自分のモットーにありまして。その言葉が今回の出演のきっかけになったと言われたことが印象的でした」とした。

倉崎氏は実際にライブにも足を運んだ。「曲だけではなく、言葉の1つ1つが北村さんの生き方を体現していて、それを伝える人だなと感じました。やなせさんの人生と彼のメッセージがリンクする部分を感じました」。

今作でモデルとなる、やなせさんについても北村は自身の哲学を交えて説明しているように感じた。「水にぬれると顔を取り換えなければいけないのに、優しさがゆえに、アンパンマンの顔を(相手に)勧める。自分が弱いとわかっていないとできない、あの優しさがアンパンマンで、それを描いているやなせさんもまた、アンパンマンだったのかと思いました」と説明した。続けて「長い間、一つの作品と向き合い続け、全うすることを感じながら、みんなと時間を過ごせたら」と意気込んだ。

現在はTBS系日曜劇場「アンチヒーロー」にも出演中。今月上旬に行われた、第2話最速上映会舞台あいさつでも、北村はとにかく“優しくていい人”だった。主演の長谷川博己が発言に悩んだ時には「先輩の尻を拭うのが後輩の役目ですから」と、素早く先輩をフォロー。

司会を務めたTBS南後杏子アナウンサーが進行に困っていると、「みんなで話しましょう」と優しくリードした。北村の行動は集まった観客へ作品への思いや熱量を伝えるためだろう。撮影現場だけではなく、共演者やファンのために宣伝活動でも「今を大切にする」というモットーを怠らない俳優だと感じた。

「あんぱん」でヒロインを務める今田は夫婦役に北村が決定した事を受け「何度も共演をしているんですが、安心でしかなかった。撮影期間が長く、夫婦役ということで緊張はあったけどホッとしました」と笑顔を見せた。

過去にはオーディションに落ちた事もあり、今作で念願の朝ドラ初出演が決定した。やなせたかしさんの人生のメッセージを北村がどう届けるのか、いち視聴者として楽しみに待ちたい。【加藤理沙】