今回の主人公は、おじ様が元ボートレーサー(岡村利継さん)という北九州出身の岡村慶太選手(30=福岡)。

海辺でくつろぐ岡村慶太選手とご家族。左から3男の拓海(たくみ)君、長男の煌太(こうた)君、2男の颯真(そうま)君、絵理香夫人
海辺でくつろぐ岡村慶太選手とご家族。左から3男の拓海(たくみ)君、長男の煌太(こうた)君、2男の颯真(そうま)君、絵理香夫人

でも、ボートレーサーになったきっかけは幼なじみのニシヤマタカヒロ君の存在でした。そう、あのボート界のエンターテイナー西山貴浩選手(31=福岡)です。幼稚園から小学校、中学校、部活の野球部までも一緒だったという2人。そんな毎日のように一緒にいた2人が高校受験を控えたある日、「これからどうする?」と聞いた岡村少年に西山少年が「(一緒に)ボート選手にならん?」と誘います。

「その時は急に言われたんで『いや、ちょっと先になっといて』って僕は高校に行って、向こうは17歳でレーサーになったんですけど、(やまと学校=現ボートレーサー養成所)卒業の時に連絡をくれて、デビュー節を見に行ったんです」。

その初めて生で見たレースに「あの独特なオイルのにおいと、ゴーッっていううるさいくらいのエンジン音も迫力があって“アグレッシブですごい世界だなぁ”」と、それから徐々に気持ちが揺れ始めたという岡村少年。その後、専門学校に進んだものの20歳になる直前のラストチャンスの時に「1回くらい試験を受けてみよう」と西山選手に相談すると「やめとけ、やめとけ。そんな甘くないけん」と予想外の返事。でもすぐに「本当にやるなら応援するけど」と願書を取り寄せてくれたり、いろいろなアドバイスをくれたそうです。

幼少期のツーショット。左が岡村慶太選手で、右が西山貴浩選手です
幼少期のツーショット。左が岡村慶太選手で、右が西山貴浩選手です

もちろんご両親にも話をすると「本気でやるって気持ちがあるなら反対はしない」と言われ、なんと先に専門学校をやめてから試験を受けたと言います。「中途半端に籍を残したまま受けると本当に全力でいけないような気がして全部やめてから受けたんで、もう後に引けなかったんですよ。もう絶対受からないと! っていう何がなんでもの気持ちで受けたんでそれが良かったのかもしれないですね」と、届いた合格通知にホッとしたと話してくれました。

やまと学校での生活も、やめたいと思ったことは1度もなかったという岡村選手。それどころか、訓練の時に教官に言われた「旋回力とかは、経験を積んだ選手とかと比べるとやっぱり差はあるけど、スタート力だけはしっかり付けておけばSG選手と差はないぞ」という言葉を励みに、「ボートの最高時速等々を全部計算して考えて、同期の中では一番スタート早かったんで、多少自信になりました」とのこと。

こうして無事にデビューを迎えた最初の節で水神祭もあげますが「僕、その1着だけじゃなくて、この節、ほぼ全部覚えてます。暗記のように全部の着順、全部のレース風景が浮かぶくらい。やっとデビューできた! これから、こうやって過ごしていくんだ! って楽しくて仕方なかったです」と昨日のことのようにワクワクした表情で振り返ってくれました。

学生時代のお写真。前列左が岡村慶太選手。1人おいて赤い帽子をかぶり、青いゼッケンをつけているのが西山貴浩選手だそうです
学生時代のお写真。前列左が岡村慶太選手。1人おいて赤い帽子をかぶり、青いゼッケンをつけているのが西山貴浩選手だそうです

それから2年後に初優出、さらに2年後には若松の新鋭リーグ戦で初優勝を飾った岡村選手。「この初優勝の時は、地元で初優出ってこともあったし、ナイターで独特の雰囲気っていうか、シリーズ最後日の最後のレースなんで、当たり前なんですけど水面に最後の6艇しか降りてないっていうのを見て“このステージまで来たんだ”って気持ちと、負けたくはなかったけど、まぁでも楽しんでいこう! という気持ちが大きかったですね。やっぱりすごく緊張したけど、その緊張感を味わえるのが楽しかったし、エンジンかけてピットアウトすると普通にレースに集中できて、天気も良かったんでお客さんいっぱいいるなぁとかその雰囲気を楽しむことができました」と地元で初優勝できた喜びを語ってくれました。

その後も優勝を重ね、先月のびわこ大賞ではG1初優出。優勝戦2着という結果に「自分でミスターンはしてないし、全力でやったからこその達成感はあります。“記念以上で優勝!”っていう新たな目標もできましたし」と背筋をしゃんと伸ばしていい表情を見せてくれました。

最後に、西山選手について尋ねると「子供の頃から、テストの点とかマラソンとか何かにつけて2人で競ってて、それが楽しかったんですよねぇ。たぶんそれくらいから競うのが好き! ってなってるんですけど、向こうが先に選手になってるんで、ライバルとも違うけど、その残してきた成績を超えていきたい。なかなかこんなに昔から、幼なじみでボートレーサーっていうのもないと思うんで一緒に頑張りたいですね」とのこと。

同じ質問を西山選手にもぶつけると「選手になってくれてうれしかったですよ。『あ~よかったなぁ』って思って。もう本当に幼い時からだし、変な感じもしますけど、お互いにSGとか行きたいですね」とのことでした。

これからの大きな舞台での2人の姿が楽しみですね。

家族団らんの岡村慶太選手と、左から絵理香夫人、2男の颯真(そうま)君、3男の拓海(たくみ)君、長男の煌太(こうた)君
家族団らんの岡村慶太選手と、左から絵理香夫人、2男の颯真(そうま)君、3男の拓海(たくみ)君、長男の煌太(こうた)君
 
 

10月22日から始まるBTSオラレ日南オープン7周年記念に出場する岡村選手。元レーサー(寺田絵理香選手)の奥様と2人で九州一周旅行をした時に、「日南海岸をぐるっとまわったり、日南のモアイ像や鵜戸神宮で運玉投げて入ったり(しめ縄の中に玉が入ると願い事がかなうといわれています)して、楽しかった思い出があるから、いつも以上に優勝する気で行ってきます」と心強い言葉を残してくれました。