かつて近畿の顔役で、グレード戦線をにぎわせた前田拓也(50=大阪)が少しだけ「らしさ」を取り戻している。

S級2班だった21年秋に流行性のウイルス感染と重度の肺炎にかかって長期欠場。昨年7月に戦列復帰してからもうすぐ10カ月となる。今節は予選、この日の選抜といずれも3着。「このままでは終われない。まだ呼吸が苦しかったりで普段の生活さえ大変だが、頑張りたい」と今の心境を明かした。

05年にオールスター、全日本選抜で決勝進出するなど、強烈な伸びでゴール前はどこからともなく突っ込んできた。だが、現状はA級1、2班戦の予選を主戦場にして目標を追うことが第一。前節奈良で失格しており、ひとたびリズムを崩せばチャレンジ降格の瀬戸際となる。

「悔しいし、もどかしい。健康な体がいかに大事か。もっと練習したい」

1年半に及ぶ寝たきり生活の際には遠い夢だったレース復帰が現実になって「幸運」と喜んだが、日を追うごとに勝負師としての本能がよみがえってくる。体の線は細くても、その目はぎらぎら。また、あの切れ味を見せようと懸命な前田が、最終日は特選に挑む。