難関大学の京大から、20年東京五輪の星が生まれた。山西利和(21=京大)が男子3位となる1時間19分3秒の自己新記録を打ち立てた。

 8月に行われる世界選手権(ロンドン)の派遣設定記録(1時間20分12秒)を上回り、日本人3位以内で、同選手権代表選考候補に仲間入り。それでも山西は「能美で優勝して世界陸上を狙いにいきたい」と、全日本競歩能美大会(3月18日、石川)での派遣設定切り&優勝による即内定を目標に定めた。

 観客向けのマイクに「京都大学の山西くんが素晴らしいペースです」というアナウンスが何度も響き渡った。驚きの自己新記録樹立だった。これまでの持ちタイムは1時間20分50秒。それを1分47秒も更新した。前半は16年リオデジャネイロ五輪代表コンビの高橋英輝(24=富士通)、藤沢勇(29=ALSOK)らと先頭集団を形成。2人が抜け出してからも、粘り強い歩きを見せた。「腕が振れていた。条件がそろえば、十分に(記録を)狙えると思っていた」。派手に喜ぶことはなく、冷静に振り返った。

 京都・堀川高から京大工学部に現役合格。物理工学科の機械コースで文武両道の毎日を送る。高3の夏に世界ユース選手権1万メートルで優勝した実力者ではあるが、競技を続けるかは悩んだという。「ただ部活をする、というのは嫌だった」。競技継続を決めた男に妥協はない。高橋、藤沢には力の差を見せられた格好だが「言い方はちょっとあれですが…。学生に勝つのは当たり前という意識。いかに実業団に食らいついていけるかだと思います」と言い切る。

 自慢の歩型は高校時代から指導を受ける石川・小松短大の内田隆幸監督(71)仕込み。内田監督は16年リオデジャネイロ五輪男子50キロ競歩銅メダリスト荒井広宙や、20キロの世界記録保持者鈴木雄介らを育てたことで知られる。日本陸連競歩担当の今村文男五輪強化コーチ(50)は「派遣設定を5人も切っている。誰が優勝してもおかしくない。そこに山西が入ってきた」とうれしそうに評価。目標の世界選手権出場へ、メガネの奥にある山西の瞳は本気だ。