【番外編】
西洋的には「雑多」も不思議な効果
「組み合わせの妙」の科学
漢方薬では、よく「組み合わせの妙」とか「体全体を調整して正常に戻す」といったことが言われる。西洋医学に慣れた現代人からみると、分かったようでよく分からない言葉だ。これは、医師にとっても同じらしい。
ところが、最近漢方薬の科学的な研究が進み、こうした言葉の意味が少しずつ明らかになってきた。漢方薬は、乾燥させた植物の根や茎などいくつもの生薬が組み合わされたものだ。それだけでも、何百何千という化学物質が含まれている。その中で何がどう効いているのかを見定めるのは、大変な作業だ。西洋医学的にみれば、何とも未整理な薬に思える。
しかも、それぞれの効果をみると、体を冷やす生薬と温める生薬が一緒に入っていたり、精神安定的な働きがある生薬、水の排出をよくする生薬など、いろいろな働きをする生薬が組み合わせてある。西洋医学的な考え方からみれば、雑多な組み合わせで理解に苦しむところだ。
ところが、こういう組み合わせの結果、漢方薬は頭寒足熱、つまり上半身ののぼせをとって下半身の冷えを温めるといった摩訶(まか)不思議な効果を示すのである。実際にこうした作用は、皮膚温や血流量の測定によって確かめられている。動物実験では、ひとつの漢方薬が水分を多くすると排水を促進し、少ないと水分をためるように働くことも確かめられている。
また、ある生薬に含まれる成分が効果の中心と分かれば、そこからより効果的な薬ができそうにみえる。ところが、実際には生薬単独より漢方薬として、つまり他の生薬と組み合わせた方が効果が高いことも分かってきた。おそらく西洋薬より概して副作用が少ないのも、こうした「組み合わせの妙」なのだろう。
西洋医学は、胃潰瘍(かいよう)は、胃酸が原因だから胃酸の分泌を抑える薬を使うといった具合に、病気の理解から合理的に薬を編み出してきた。しかし、漢方は五感をフルに活用して体の異常を外からとらえて薬を作ってきた。そこに秘められた知恵は思った以上に深いのである。
【ジャーナリスト 祢津加奈子】
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