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データでみる日本代表「解析料理」

(2005年6月25日付紙面から) バックナンバー一覧へ

ひと皮むけた日本 ピールオフ!!/コンフェデ杯

<コンフェデレーションズ杯:日本1−2メキシコ>◇6月16日◇ハノーバー・ニーダーザクセンシュタディオン
<コンフェデレーションズ杯:日本1−0ギリシャ>◇6月19日◇フランクフルト・バルドスタジアム
<コンフェデレーションズ杯:日本2−2ブラジル>◇6月22日◇ケルン・ミュンガースドルファースタジアム

コンフェデ杯3戦で見えたW杯での得点パターン

図1 メキシコ戦 柳沢のゴール

 ジーコジャパンがドイツでひと皮むけた。柳沢、大黒といった機動力あるFWを生かしたスピーディーなパスワークで、世界の強豪国と対等に渡り合った。サッカー解析システムopta(オプタ)によると、従来のポゼッション戦術とは異なるダイレクトプレー「ピール・オフ(Peel off=皮をむく)」戦術で数多くのチャンスをつくっていた。コンフェデレーションズ杯1次リーグ3試合のデータを基に、来年へつながる日本代表の新たな可能性を検証する。

■(1)ダイレクトプレー■(メキシコ戦、図1) 大きな展開から加地を走らせ、カウンター攻撃の鉄則ともいえるニアサイドへの速いクロス。そこへ走り込んだ柳沢を含め、選手間のコンセンサス(共通理解)が十分なされていた。

 柳沢の復権が大きい。前線に動きだしのいい選手を置いたことで、早い段階で縦パスが入っている。今年12試合あるうち、コンフェデ杯以前の9試合で速攻(敵ゴールラインから36メートル以内に12メートル/秒で入った一連のプレー)は283回、対して遅攻は375回。しかし今大会3試合では速攻82回、遅攻80回。速攻率は43%→50・6%へと高まっている。これは相手に考える時間を与えない、対応を遅らせる意味でも大きなゴールチャンスにつながる。

図2 ギリシャ戦のシュートまでの軌跡

■(2)3人目の動き■(ブラジル戦、プレーイラスト) 中盤で2つのトライアングル形成から小笠原がスルーパス。この間にタイミングを見計らい、右後方から一気に前線へと加地が駆け上がってゴール。だが、惜しくも判定はオフサイドだった。

 今大会で輝きを見せた1人として、右アウトサイドの加地は見逃せない。攻撃に加わる回数が多くなり、何よりシュートへの意識が高まった。3試合5本は、柳沢の9本に次ぐチーム2位タイ。オフサイドで取り消された1本も加えれば、実際は6本あった。コンフェデ杯以前の今年出場8試合で3本だったことを考えれば、その攻撃への貢献度は計り知れない。もともと強い心肺機能に加え、巧みなオフザボールの動き。クロスだけに終わらず、攻撃の幅は確実に広がっている。

■(3)ピール・オフ戦術■(ギリシャ戦、図2) 大黒の決勝点が好例だ。一連のプレー中4度、相手選手にクリアされながらも執ようにボールを拾い、DFライン前へボールを運んで速いパスワーク。そこでできたDF網のギャップを逃さず、中村から絶妙のスルーパスが通った。

 計16本のシュートは2つのCKを除いたすべてが、バイタルエリアへの進入から生まれている。ピール・オフとは、相手DFライン前でワンタッチなどで素早くボール回しすることで、その手堅く形成されたポジションをめくっていくことを指す。まさに熟れた桃の皮を1枚1枚むいていくごとく、ターゲットを丸裸にしていった。そして中村のパスは鋭利なフォークとなり、最後はその豊潤な実へと突き刺さった。

 今大会、日本の90分平均のセンタリング数は13・8本(3試合280分で43本)。コンフェデ杯以前

前半4分 加地の幻のゴール

が26・7本(9試合853分で253本)だけに半減しているが、むしろ歓迎すべきことだ。これは大外へ回してセンタリングを入れる従来のスタイルを捨て、ゴールへの最短距離を模索した結果にほかならない。

 手数をかけずにダイレクトプレー、そしてピール・オフ戦術に「3人目の動き」を絡めることでゴールをこじ開ける。これぞ、世界と渡り合うジャパニーズ・スタイル。ジーコジャパンはその戦術のごとく、ひと皮むけた。【佐藤隆志】

相手DFライン前で素早くパス回し堅守はがす

図3 ブラジル戦の失点場面

課題1対1 脆いDF陣
  守備面で日本の弱さが目立った。ともに2失点を喫したメキシコ戦とブラジル戦。失点場面に総じて絡んだのがドリブルへの対応のまずさだった。メキシコは49回(ラン36回含む)、ブラジルは54回(同31回含む)のドリブルを成功させている。1対1の局面を破られることで、守勢を余儀なくされた。

 ブラジル戦の1失点目(図3)には課題点が集約されている。CKからルーズボールとなった場面。中村が競り負け、加地も足先で取りにいった揚げ句、軽くいなされた。ロビーニョのフリーランに併走しながら戻った三都主は、相手の進路変更にもハナから付いていくことなく、後方の中央ゾーンを抑えに入ったことが結果裏目となった。

 90年代以降プレッシング戦術が取り入れられているが、もともと日本はリトリート(retreat=後退)という引いて守る戦術が根底にある。ゴールするためにボールを奪うのでなく、ゴールを守ろうという考え方。人でなく、ゾーンを抑えることが先決とされた。ただし、パスワークにドリブルを絡める中南米の国には、依然として煮え湯をのまされ続けている。

ギリシャのような折り目正しき組織サッカーは封じ込められた。だからこそ、課題は個としての1対1。中南米を筆頭とするくせ者対策が、今後の守りにおけるテーマとなる。

 ○…大黒の勢いは止まらない。今大会3試合でさらに、ゴールへ向かう強い姿勢を見せた。3試合99分間でプレー数54回。ただし、自陣でプレーしたのはたった4回だけ。平均プレー位置(ハーフラインからの距離)も押し込まれる展開が増えたにもかかわらず、大会前の20・65メートル→23・2メートルと高くなった。また、2得点を上乗せしたことで、代表Aマッチにおける90分平均得点は1・1点(325分で4得点)。昨年大ブレークした久保でさえ0・82点のところ、ジーコジャパンで唯一の1点台をたたき出した。

◆日本代表メンバーのコンフェデ杯3試合スタッツ◆

選手名 出場
時間
プレー
機会

セーブ
被枠
内S
パス シュート
阻止率
枠内S
阻止率
フィード その他
総数 成功 総数 成功
GK 川口 能活 280 122 4 11 50 15 78 55 92.0% 73.3% 29 22 1 2 0

選手名 出場
時間
プレー
機会

アシ
スト
シュ
ート
ラスト
パス
パス クロス スルーパス ドリブル 守 備
総数 成功 総数 成功 総数 成功 総数 成功

宮本 恒靖 280 142 0 0 0 0 113 104 0 0 0 0 0 0 4 25 1
田中 誠 280 154 0 0 0 0 118 105 0 0 0 0 0 0 3 31 1
加地 亮 280 167 0 1 5 2 147 117 8 2 1 0 4 4 4 11 2
三都主アレサンドロ 280 155 0 0 1 4 121 91 7 2 0 0 6 2 3 18 2
茶野 隆行 82 41 0 0 0 1 30 29 1 1 0 0 0 0 3 6 2

福西 崇史 280 171 0 1 3 2 139 117 0 0 3 0 4 3 1 14 5
中田 英寿 280 242 0 0 1 2 208 174 2 1 3 1 4 4 6 15 0
中村 俊輔 243 227 1 1 4 8 199 159 13 3 4 2 4 3 3 6 3
小笠原満男 188 137 0 0 1 4 108 77 8 1 5 1 1 1 2 4 2
中田 浩二 51 28 0 0 1 0 20 19 0 0 0 0 1 0 0 5 1
稲本 潤一 33 25 0 0 1 0 19 17 0 0 0 0 0 0 0 2 1
遠藤 保仁 18 14 0 0 0 1 13 9 0 0 0 0 0 0 0 0 0

柳沢 淳 259 112 1 0 9 2 76 58 0 0 0 0 2 1 2 1 2
玉田 圭司 122 50 0 0 4 1 34 26 1 0 1 0 5 4 1 0 0
大黒 将志 99 54 2 0 5 3 38 24 3 1 2 0 0 0 2 0 0
鈴木 隆行 20 3 0 0 0 0 3 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0
合計 日   本   1883 4 3 35 30 1502 1215 43 11 19 4 31 22 36 144 22
【注】出場時間はロスタイムを含む正味のもの。ラストパス=シュートにつながったパス。 B=ブロック、C=クリア、I=インターセプト。 セーブ=枠内シュートを防いだ数。チーム合計はプレー選手不明分も含む

1勝1敗1分けで1次敗退

日本の基本布陣

★コンフェデ杯VTR★
 ◆メキシコ戦 1トップに柳沢、2シャドーに小笠原、中村を敷いた3−4−2−1布陣。前半12分に小笠原→加地→柳沢の速い展開から先制ゴールを奪う。しかし、その後は相手の速いパス回しに苦戦。同39分にメキシコMFシーニャに強烈なミドルを決められ同点、後半19分にはFWフォンセカにヘディングシュートをねじ込まれた。ボール支配率46・8%の通り、終始日本は劣勢だった。

 ◆ギリシャ戦 4−4−2布陣に切り替えた日本がFW柳沢、玉田を生かした速い攻撃で次々とチャンスをつくった。前半38分に玉田、同41分に柳沢が抜け出し好機を迎えるがゴールならず。そして後半20分、玉田に代えて大黒投入。その大黒が同31分、中村のスルーパスからついに虎の子の1点を奪った。ボール支配率(54・6%)で上回るなど、日本が安定した攻守を見せた。

 ◆ブラジル戦 ギリシャ戦同様4−4−2布陣。前半10分、FWロビーニョに先制点を許す。日本は同27分、中村が27メートルの距離から豪快なミドルシュートをたたき込んだ。しかし同32分、今度はロナウジーニョに勝ち越しゴールを奪われた。後半から日本は切り札・大黒を投入。43分に中村のFKの跳ね返りを大黒がボレーシュートで決め同点。ロスタイムにもヘディングシュートを放つが、逆転はならなかった。日本のボール支配率45・8%。

◆日本代表のコンフェデ杯3試合スタッツ◆
チーム プレー シュート キープ ラ  ン ドリブル パ  ス
日本
メキシコ
679 1 1 10(1=10%) 353(330=93%) 17(15=88%) 15(10=67%) 547(450=82%)
712 2 2 18(2=11%) 404(386=96%) 38(36=95%) 18(13=72%) 577(474=82%)
日本
ギリシャ
604 1 1 16(1=6%) 282(263=93%) 26(24=92%) 8(6=75%) 473(363=77%)
503 0 0 8(0=0%) 201(185=92%) 19(18=95%) 8(6=75%) 385(269=70%)
日本
ブラジル
600 2 1 9(2=22%) 296(278=94%) 12(10=83%) 8(6=75%) 482(402=83%)
707 2 2 24(2=8%) 399(380=95%) 33(31=94%) 39(23=59%) 582(521=90%)
 
チーム スルーパス センタリング B、C、I C  K 直接FK 間接FK キープ時間
日本
メキシコ
7(0=0%) 14(6=43%) 12、45、10 3(1=33%) 8(7=88%) 2(1=50%) 30分42秒
5(1=20%) 20(7=35%) 8、44、5 5(1=20%) 15(14=93%) 1(1=100%) 34分57秒
日本
ギリシャ
5(2=40%) 22(3=14%) 10、51、2 8(4=50%) 14(9=64%) 5(5=100%) 26分48秒
1(0=0%) 22(5=23%) 18、52、8 8(3=38%) 20(11=55%) 0(0=0%) 23分41秒
日本
ブラジル
7(2=29%) 7(2=29%) 14、48、10 2(0=0%) 16(15=94%) 3(3=100%) 27分16秒
3(1=33%) 13(4=31%) 9、31、7 4(3=75%) 21(20=95%) 4(3=75%) 32分17秒

◇opta(オプタ) Jリーグやプレミアリーグの公認するプレー分析データ。ただし、今回使用したデータ(シュート数等)は公式記録とは一致しない。出場時間はロスタイムを含めた正味の時間を採用している。

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