なでしこ快挙五輪初勝利!/女子サッカー
<アテネ五輪女子サッカー:日本1−0スウェーデン>◇11日◇1次リーグ◇ギリシャ・ボロス、パンテサリコ・スタジアム
【ボロス(ギリシャ)11日=佐々木一郎】強いぞ! なでしこジャパン! メダルが見えた。アテネ五輪のトップを切ってスタートした女子サッカーで、昨年のW杯準優勝のスウェーデンと対戦。前半24分、FKからFW荒川恵理子(24=日テレ)が右足でゴールに流し込み先制すると、攻守で圧倒。国際サッカー連盟(FIFA)ランク4位の強豪を同13位の日本が内容でも圧倒して、1−0で撃破した。五輪2度目の出場で初勝利を挙げ、1次リーグE組1位突破は決定的。完全にメダルを射程圏に入れた。
メダルが見えた瞬間だった。スウェーデンの猛攻が続く、もどかしいロスタイムに終わりを告げる笛が鳴り響くと、選手らは抱き合って喜んだ。全力を出し切り疲労こんぱい。その抱擁は弱々しい。しかしその顔に浮かんだ笑みは、限りなく誇らしげだった。
メダルへの道を切り開いたのはFW荒川だった。前半24分、DF磯崎のFKをFW大谷が頭で流す。スウェーデンGKヨンソンがキャッチできず、こぼしたところに詰めていたのが荒川だった。DFウェストベリと競りながら転がるボールに右足を伸ばした。MF沢が抱きつき、MF小林が飛びついた。昨年W杯準優勝の強豪を狼狽(ろうばい)させるには十分だった。
荒川の大舞台での強さは証明済みだ。五輪切符のかかった4月のアジア予選準決勝・北朝鮮戦でも先制弾を決めていた。高いキープ力と男子をほうふつとさせるリズムに乗ったドリブル。幼少のころ、男になりたくて「デパートに行って、ちんちん買ってくる!」と叫んだこともある。もっと早くに名を上げてもおかしくなかったが、度重なる大ケガに泣かされた。
01年に脱臼グセのあった左肩を手術。同12月に復帰も、1カ月後の全日本女子選手権の伊賀戦で、現在の日本の守護神・山郷と接触し、右スネを開放骨折し、切断の可能性を宣告された。山郷が号泣して見舞った際も「人生、これもあり」と笑って受け止めた。右足のかかとにあけた穴にワイヤを通され、右足をつるし、手術を待った。「心肺機能を落とさないため、ベッドで息を止める練習をしていました」という天然キャラが、爆発した。
エースのゴールは、日本に流れを引き寄せた。シュートはスウェーデンを上回る10本。前線で荒川が体を張ってボールをキープ。組織的な守備も機能し、前半24分のスウェーデンのFKでは、カベに入ったMF小林が根性を見せた。DFベントソンの強烈なキックから放たれたボールを、みぞおちで受けた。苦痛でこぼれ落ちそうになる涙を必死で止めて、ボールを追った。
02年8月の就任以降、アテネを最大目標にしてきた上田栄治監督(50)の指導、采配もズバリはまった。完全になでしこの花がアテネに咲き誇った。2月に福島・Jヴィレッジで行った19日間にも及んだ長期合宿では、その大半をフィジカル練習にあて、フィジカルで勝るスウェーデンに走り負けなかった。男子へ近づくことが世界への近道。その信念を貫き、女子サッカー界に大きな1歩を刻んだ。
[2004/8/12/09:24 紙面から]
写真=前半24分、先制ゴールを決める荒川(右)(撮影・宇治久裕)
|