神山雄一郎(47=栃木)が巧妙なイン突きで、11年7月のサマーナイトF以来、久々にビッグレースを制した。47歳22日での優勝は、これまで松本整(引退)が保持していたG2以上の最年長記録(45歳19日)を更新した。完全Vを狙った新田祐大は惜しくも2着。3着には稲垣裕之が入った。

 ヒーロー神山雄一郎は謙虚だった。「稲垣君に申し訳なかった。事故点の関係で動くに動けなかった…」。番手まくりを打った稲垣裕之にピタリとついて、迎えた最終バック。両者にとって最大のライバル新田祐大がまくってきた。神山の真横で新田がもがく。胸中は「ブロックしなければ」。しかし、事故点の過多で激しい動きは制約されていた。この時点で勝利の女神は遠のいたはずだった。

 ところが、もう1度チャンスが巡ってきた。稲垣が新田を止めにいき、Vロードが開けた。体が反応するままに前へ踏んだ。「真っすぐ入っただけだった。まさか、優勝できるとは思っていなかった」。思わぬ形で、松本整が持っていたG2以上の最年長優勝記録を更新した。

 追い込みに変わって、ビッグレースでの優勝は遠のいていた。11年7月サマーナイトF以来の優勝だ。慣れない戦法に試行錯誤し、昨年には右腓骨(ひこつ)を骨折する大けがもあった。それでも、戦う心が折れない理由は「まず競輪が好きなこと。そして、追い込みに変わって、モチベーションは新人のようになった」。競輪が好きで好きでたまらない。だから、学ぶことをやめない。誰よりも純粋な気持ちで競輪と向き合っている。

 目標とする追い込み選手を訪ねると「井上茂徳さん、山口健治さん、山口幸二さん、合志正臣さん…」。引退した名選手から現役まで10人ばかりがすらすらと出てきた。「それぞれのいいところを取って、もっといい選手になりたい」。その先には…今年こそ、悲願のグランプリ制覇があると神山は強く信じている。【東 和弘】

 ◆神山雄一郎(かみやま・ゆういちろう)1968年(昭43)4月7日、栃木県生まれ。競輪学校61期生で在校1位。卒業記念レース優勝。88年5月花月園デビュー。G1通算優勝16回(競輪祭新人王除く)。G2共同通信社杯は6回目(4日制では5回目)の優勝。通算成績は2150戦825勝。通算獲得賞金は27億61万2509円。180センチ、87キロ。血液型B。