日本代表バヒド・ハリルホジッチ監督(63)が強く望んで実現にこぎつけたアウェーでのイラン戦で、理想の守備を見せつけられた。初采配からちょうど200日のイラン戦。出足の速い相手に日本のやりたい守備をされ、速攻を許した。8日のW杯アジア2次予選シリア戦から先発を5人入れ替えた。テストの意味合いも強い一戦とはいえ、課題が浮き彫りになるドローだった。

 やりたいことを相手にやられた。前半ロスタイム。ハリルホジッチ監督は主審が日本陣内のPKスポットを指し示すのを見て首を振ってため息をついた。DF吉田が背後から。ボールを保持する相手の足に引っかかって転んで相手を倒した。全く信じられない、集中力を欠いたプレーで与えたPKだった。

 1度はGK西川が右に跳んで止めた。しかし、こぼれ球への反応でも相手に劣った。一気に詰められネットを揺らされた。

 吉田の体たらくはともかく、伏線はあった。序盤からイランに押し込まれた。鋭い出足でボールを奪われると、その勢いのまま縦に速い攻撃を仕掛けられた。同35分には左サイドを崩され中央でフリーのFWアズムンにグラウンダーのクロスを合わされて肝を冷やした。

 指揮官はその前半を「全く満足していない」と振り返った。理由は「試合をコントロールできなかったから。フィジカルで支配された。本来なら我々はテクニックで支配しなければいけないのだが、慌てたのかミスも多かった」からだという。

 イランの激しい守備を起点にした攻守の切り替えの速いこのスタイルこそ、同監督が日本に求めているもの。前日12日の練習前に「我々は守備でもラジカル(劇的)なチェンジをしたい。引きながらではなく前に出ながら守備をする。抜本的な修正です」と話していた。

 同じアジア屈指の強豪に出足で圧倒されスピードに乗った攻撃に、後ろから追いすがって守るしかなかった。ある程度の手応えを口にしていた守備も理想にはまだ程遠かった。初采配からちょうど200日。常に口にする「日本のアイデンティティー」の構築には、まだまだ時間がかかる。【塩畑大輔】