なでしこジャパンが今日29日、オーストラリアとのリオデジャネイロ五輪アジア最終予選初戦(大阪・金鳥スタ)を迎える。開幕前日の28日は堺市内で最終調整。昨年末に現役引退した澤穂希さん(37)の欠場試合で得点トップだったFW大儀見優季(28=フランクフルト)は、新時代の幕開けを誓った。澤さんの穴は背番号10を引き継ぐ大儀見ら全員の力で埋めていく。

 最終調整を終え、大阪府内の宿泊先に戻った午後1時。大儀見は笑みを見せず、発言全てに力を込めた。澤さんの引退後、初めて迎える公式戦を前に「寂しい気持ちはあるけれど、今はみんなでやっていかないといけない」。そして、新背番号10の重みを想像した。

 「覚悟と責任を感じている。誰が見ても納得できるプレーをしたい」

 代表通算125試合出場の大儀見は、205試合で83得点を誇る澤さんの大きさをかみしめてきた。澤さんが欠場した試合で重ねたのは、今回のメンバー最多となる12得点。昨年のW杯決勝で米国に2-5で敗れた時には「11年のW杯(優勝)からやってきたことが全て無になったぐらいの衝撃」を味わった。生まれたのは危機感。「澤さんの引退を受けて、その思いが強くなった」。だからこそ後ろではなく、前を向く。

 大儀見の背中を後ろで見る仲間も思いは同じだ。澤さん欠場の試合で10点を挙げているMF阪口は「澤さんと一緒にやって、戦う姿勢を学んだ」と自分に言い聞かす。同9得点のMF川澄は「今まで澤さんがいない時は、流れが良くない時が多かった。その中でも(自分が)得点を取れてきたことをプラスに考えたい」と前を向いた。

 初戦のオーストラリアは高さがあり、接近戦に強い。MF宮間主将が「私たちの素早い攻撃で得点したい」と語る攻略法。今求められるのは、メンバー20人全員が団結し、開拓者になることだ。

 10日間で5試合という強行軍。異例の超短期決戦にも佐々木監督は「今は誰が出ても遜色ない。経験に関係なく、いいコンディションの選手を先発にする。(不安は、試合の)白黒だけ」と満点の準備を強調した。澤さん抜きで立ったリオへのスタートライン。後は進むだけだ。【松本航】

 ◆大会方式 日本、オーストラリア、韓国、中国、ベトナム、北朝鮮の計6カ国が参加。総当たりで、上位2カ国がリオ五輪出場権を獲得する。順位決定は勝ち点、得失点差、総得点の順。大阪市にあるヤンマーと金鳥スタの2会場で行われ、日本戦はすべて金鳥スタで開催される。