もう“中東の笛”には泣かない-。W杯アジア最終予選初戦でUAEに逆転負けした日本代表は2日、さいたま市内で調整した。カタール審判団による疑惑の判定もあった敗戦から一夜明け、ハリルホジッチ監督(64)は円陣で「これが最終予選」「進化を見せろ」とげきを飛ばした。6日のタイ戦も同じく中東のイラン審判団が裁く予定。不運な判定を想定した実戦練習にも取り組み、巻き返しへ動き始めた。

 厳しい判定のファウルから2失点したショッキングな敗戦から12時間たっても、チームの雰囲気は重たいままだった。笑顔はない。ハリルホジッチ監督は全選手を集めた円陣で、前日の判定について切り出した。

 「審判は残念だった。ヒロキ(DF酒井宏)が受けたタックルもイエローではなく普通はレッドカードだ。だが、忘れてはいけないのは、これが最終予選だ。政治も宗教も関わってくる全然違う世界」

 相手が、さまざまな手段でファウルを誘い得点につなげる場合があることを強調し「それもフットボール。世界にはいろんな審判がいる」とした。就任当初から言い続ける「ずる賢く戦う姿勢」を再度求め「この敗北には意味がある。進化を見せろ。本当の日本を見せろ」と鼓舞した。

 FW浅野の幻のゴールを含め、カタール審判団の判定を巡り、後味の悪い結果になったが、下を向いてばかりはいられない。6日のタイ戦も、ファガニ主審(38)率いる同じく中東のイラン審判団が笛を吹く予定だ。前日にはオーストラリア-イラクを裁いている。

 同主審は3月29日のシリア戦(日本5-0)も担当。当時、ハリルホジッチ監督が「審判の笛にイライラしすぎた。あまり信頼し過ぎないようにしたい」と愚痴をこぼしている。前夜の残像も重なり“中東の笛”への警戒感は強まった。この日からさっそく厳しい判定を想定した実戦を取り入れた。前日の先発メンバー以外が戦術練習を行ったが、FW武藤がDF丸山に足をかけられて倒されても、指揮官は「カタールの審判は(ファウルを)取らないよ」と“本番”をイメージしてプレーをそのまま流した。選手も意図を理解している。MF原口は「技術的には日本が負けることはないと思う。負けるとしたら、気持ちとかずる賢さ」と必勝を誓った。残り9試合全勝を目標に掲げたチームは日本での合宿を打ち上げ、敵地タイへと旅立った。【岩田千代巳】

 ◆UAE戦の笛 後半32分、ゴール前にいたFW浅野がFW本田の折り返しを左足で合わせた。テレビの中継映像ではボールはゴールラインを越えているように映ったが、判定はノーゴール。本田と浅野が主審に抗議したが、覆らなかった。他に、前半18分にDF吉田がFWマブフートを倒したとされ警告を受けた。そのFKを決められた。後半8分には、MF大島がペナルティーエリア内でMFハマディの足をかけたと見なされてPKを献上。いずれも日本の選手たちは判定に食い下がった。

 ◆ファガニ主審の笛 今年主審を務めた国際試合11試合で出した警告(イエローカード)は平均3・2枚だが、試合によって5、6枚とやや波がある。ファウル数の平均は25・8回。リオ五輪日本代表はアジア最終予選の北朝鮮戦でイエローカードは1枚ながら、ファウルは相手の14回に対し、23回も取られた。ちなみに今季J1の1試合平均ファウル数は29・5回、イエローカードは2・8枚。