FW興梠慎三(22=鹿島)が、岡田ジャパンの「新野人」を襲名する。15日の鹿屋体大との練習試合(45分×2本)で先発し、1ゴール1アシストと活躍した。50メートル5秒台後半の快足でDFの裏を突くスピードと、ワイルドな風ぼうは、97年のW杯アジア最終予選第3代表決定戦のイラン戦で、W杯初切符をつかむVゴールを決めた「野人」FW岡野雅行そっくり。岡田監督も興梠のドリブルを絶賛し、20日のアジア杯予選イエメン戦(熊本)で初先発の可能性も浮上。W杯予選の「切り札」として期待が高まった。

 無人の野を行くがごとく、興梠が爆走した。前半4分にDFの裏に抜け出して、MF香川にパスを出し先制点をアシスト。同9分にはDF駒野の浮き球パスに走り込み、DF2人を一気に振り切り右足でたたき込み、圧倒的なスピードを見せつけた。

 1本目でプレーを終えると「DFラインが(浅すぎて)おかしかった。少し疲れたけど、90分やろうと思えばできた」と物足りなさそうな顔をした。オフ明けで筋肉が張り、14日には「シュートを打っても足が上がらない」と弱気だったが、実戦になると別人だった。岡田監督も「相手をぶっちぎった。良さを出した」と高評価した。

 新年早々、ぶっちぎりの快足で日本のお茶の間をわかせた。TBSが3日に放送した「スポーツマンNO・1決定戦」に出場。10メートルの高さから落下するボールに走ってタッチする「ショットガンタッチ」で、北京五輪十種競技金メダリストのクレイ、ハンドボール日本代表の宮崎ら各競技の快足自慢を振り切り、堂々の1位となった。

 宮崎・鵬翔高時代からJクラブの強化担当者らに「速さはもちろん、野生動物のような独特なリズムでのドリブルもいい」と高評価されていた。その野性味あふれるプレーを、日本代表レベルでも発揮できるようになった。97年のW杯予選で岡田監督は、長髪をなびかせてプレーする「野人」の異名を取った俊足FW岡野を「切り札」として起用した。プレースタイルと風ぼうが岡野に似ている興梠は、「新野人」として今年のW杯予選の切り札として期待がかかる。

 FW陣筆頭格の、田中の相棒に名乗りを上げたが本人は満足してはいない。「お互い近くにいようと話したけど、もうちょっと修正が必要です」。興梠は視界の先に、アピールの舞台となるイエメン戦をとらえていた。【村上幸将】