MF沢穂希(32=INAC)が米国代表エースFWアビー・ワンバック(31)をつぶす。なでしこジャパンは17日(日本時間18日早朝)、FIFAランク1位の米国とW杯ドイツ大会決勝を戦う。18歳から米国に渡って米国サッカー事情を熟知し、ザックジャパンの代表候補にもリストアップされているDF木村光佑(27=MLSコロラド・ラピッズ)は16日、「日本の忍耐力で心を削れ」と必勝法を伝授。沢を中心とした守備の粘りで、米国人の精神面の弱さをつくことに勝利のカギを見いだした。

 米国サッカーを知り尽くす男は、日本の勝利を確信していた。木村は米の大学で結果を出し、MLSでプロの頂点まで上りつめた経験から、米国女子の強さを分析した。

 木村

 屋外の球技は、男子はアメフト、野球など多岐にわたるが、女子にはサッカーしかない。小学校から体育の授業で学ぶし、他のスポーツに流れることが少ない。だから必然的に長期の強化がなされる。女子の競技人口は世界一です。

 高校や大学には推薦制度も確立され、実力不足の選手が少しずつ切り落とされていく。徐々に仲間との競争意識も芽生え、実力が確かなものとなっていく。

 木村

 その象徴がワンバックです。間違いなく高さ、シュート力は世界一。男勝りな勢いや強引さもあります。けれど、米国人特有の弱さもある。それはプライドが高すぎること。自分の理想のプレーを何度もつぶされたとき、イライラし始めて立て直せなくなる。それは米国で一緒にプレーする機会も多かった沢さんならきっと感じているはず。

 沢とワンバックは09~10年に米女子リーグのワシントン・フリーダムでともにプレーした。元同僚でもある敵のエースは181センチの長身を生かし、準々決勝ブラジル戦では延長後半ロスタイムに同点弾。準決勝フランス戦の決勝弾は、ゴール前のファーサイドで待ち構える最も得意とするところだ。3戦連続得点中の勢いを止めるのは、沢の粘り強い守備力と断言した。

 木村

 沢さんのすごいのは、ここで止めなきゃやられるという危険察知能力だと思う。センターバックの2人と挟みこむこともできるし、サイドに流れてクロスを上げる中盤選手が供給するパスの出どころを消す役割も担える。この作業をバランスを保ちながら繰り返すことができるのが沢さん。何度も何度も体を張って、相手の強みをへし折る。日本の忍耐力で心を削れば、必ず封じることができます。

 木村と沢は昨年ワシントンで対面している。木村の試合前に大使館主催イベントに参加。男女の米サッカー界日本人トップ選手としてサイン会を行った。試合後は食事もともにした。

 木村

 普段の沢さんは優しく、気遣いのできる女性でした。ドイツに日本が勝った時は米国では「日本よくやった」と沢さんもヒロインでした。でもこの決勝はなでしこに勝ってほしい。沢さんを起点とした、どこの国もまねできないパスサッカーなら、米国からも点をとれると思う。

 対戦成績は3分け21敗。女子サッカー界の横綱から初の金星を奪うため、沢がエースを封じる。【鎌田直秀】