【ブリスベーン(オーストラリア)10日=盧載鎭、益子浩一、保坂恭子】日本代表のMF本田圭佑(25=CSKAモスクワ)が、3戦連発で14年W杯出場を手繰り寄せる。明日12日のW杯アジア最終予選オーストラリア戦に向け、現地で初練習を行った。B組首位の日本は、宿敵に勝てば3連勝で独走態勢に入る。厳しい敵地戦でも本田は「相手の土俵でなく、自分たちの土俵で戦う」と宣言。97年の呂比須ワグナー以来となる最終予選3戦連発で、ブラジルへの道を開く。

 初練習を終えたばかりの火照った体に、冷たい雨が降り注いだ。初冬の現地は午後5時を過ぎると、周囲は真っ暗だ。いつものように情報漏れを防ぐため、非公開で行われた練習後、スタジアム横の通路で取材に応じた本田は既に戦闘モードに入っていた。

 「日本にとっては、いろんな面で挑戦しないといけない。臆することなく、日本らしい戦いをピッチで見せることができればいい。新しい挑戦-。アウェーのオーストラリア戦は、意味のある一戦になる」

 それは自分との「挑戦」でもある。3日オマーン戦で1点、8日ヨルダン戦で3点を決めており、次戦に3戦連発がかかる。最終予選の3戦連発は、97年に呂比須ワグナーが達成して以来。当時、加茂周監督が更迭された直後、日本国籍を取得したばかりの侍が、98年W杯フランス大会出場権獲得に大きく貢献した。日本の置かれた立場は、15年前と今とでは劇的に変わった。だが時代が変わっても、変わらないものもある。それは点を取ることへのこだわり-。それを一番知っているのは、本田自身だ。

 「あくまでも相手の土俵ではなく、自分たちの土俵でサッカーをしないといけない。満足できるいい形で日本に帰りたい。常にバランスを考えて、守りでもチームに貢献する」

 点を取る姿勢は不変でも、1つだけ変わったことがある。バランスを意識する「新しい本田」の姿-。3年前は、ゴールに固執するあまり、守備を嫌った。失点の要因になった09年9月のオランダ戦後には「俺の守備のことばかり言うのが日本らしい。それより俺がシュートを1本も打っていないことを指摘してほしい。結果を出すポジションなんやから」と言った。それが3年の歳月を経て「バランス」「守り」という言葉を口にするようになった。

 敵地で勝てば3連勝で、14年W杯ブラジル大会出場へ独走態勢に入る。W杯優勝を公言したことのある男が目指すのは、アジアではなく世界。本田のゴールが、遠く離れた日本を歓喜の渦に包み込む。【益子浩一】