【クレールフォンテーヌ(フランス)17日=鎌田直秀】なでしこジャパンのDF鮫島彩(25=仙台)が、“胸囲”のスピードで「世界の起点」を抑え込む。当地でのロンドン五輪直前合宿2日目の練習で、1対1の強さをアピールした。五輪1次リーグ初戦のカナダや優勝候補の米国には右サイドに攻撃の起点となるスピードのある選手がいるが、左サイドバックで対峙(たいじ)する鮫島は上半身の筋トレで胸囲が5センチアップ、相乗効果で1対1にも負けない走力を身に付けた。明日19日(日本時間20日未明)のフランス女子代表との五輪前最終戦で、その成果を見せる。

 5対5のミニゲームで、鮫島の1対1の強さが際立った。MF川澄のスピードに追いつき、体を当ててボールを奪った。FW大野の素早いフェイントにも、左足を伸ばして封じた。攻撃力も増していた。一瞬のスピードでDFをかわして中央に切れ込み、2本のミドルシュートを右足で豪快にゴールに突き刺した。

 左サイドの鮫島の進化は日本の金メダル獲得への大きな推進力になる。五輪では、鮫島と対峙(たいじ)する右サイドから攻めてくるチームが多い。初戦のカナダはMFスコットが右サイドからエースFWシンクレアとホットラインを形成している。米国はスピード豊かなMFオライリーの右サイドからの突破が攻撃の起点になる。FWモーガンもサイドに流れる。ここを鮫島が抑え切れば、日本に勝機が広がる。

 鮫島も「サイドバックは1対1の強さが必要。そこが私の強化ポイント」と自覚して、肉体強化に取り組んできた。昨年のW杯後に所属したフランスリーグのモンペリエのトレーナーに、一瞬のスピードをつけるため上半身の強化を進言された。「下半身は強いから、上半身を鍛えてバランス良くすれば、もっと速くなると言われました。5メートルくらいの距離を走るスピードが上がったと思う。胸囲は5センチくらいは大きくなったかもしれません。体重は変わっていませんよ」。

 東京電力時代は筋トレはほんのわずかしかしていなかったが、フランスでは週に5日はトレーナーと二人三脚での特訓を続けた。もともとの脚力に加えて、胸筋や腹筋アップが独特の“サメ走り”のスピードアップにつながった。

 明日19日にフランス代表との五輪前最後の親善試合に臨む。相手の右サイドのMFトミスはフランスリーグでも何度も対戦したライバル。「これまで見た選手の中で一番速い。ボールを持っていても速い。スペースを与えると嫌なタイプなので、まずはボールを受ける時にガツンと行きたい。自分の間合いでいればスピードに対応できる意識はある」。今は五輪前の“予行演習”を楽しみに待っている。