日本代表DF長友佑都(26=インテルミラノ)が、「インテンシティ」を体現する。23日の代表発表でザッケローニ監督(60)が繰り返したキーワードは、球際での激しさやスピード感を意味する。監督の意図する語句を理解する長友が、「インテンシティ」をブルガリア戦(30日午後7時20分、豊田スタジアム)とオーストラリア戦(6月4日午後7時30分、埼玉スタジアム)で見せ、W杯へ導く。

 長友は、世界へのキーワード「インテンシティ」を日々、体験してきた。所属するインテルでは不動のサイドバック。体格に優れた相手に勝つためには、球際の激しさでボールを奪い取り、攻めに転じてからはスピードで置き去りにする。リーグ戦の試合だけでなく、毎日の練習から求められ、自然と身に付いた。23日の日本代表発表の記者会見でザッケローニ監督が繰り返したイタリア語の「intensita」は、長友にとって当然のことなのかもしれない。

 ひざの故障で招集されなかったヨルダン戦は、イタリアでテレビ観戦した。W杯出場を決めてくれるはずのチームメートに声援を送ったが、1-2で敗戦を喫した。「自分がその舞台に立ててない歯がゆさがあった」とした上で「1対1の戦いで押されていた。相手を甘くみていたと思う。それが勝敗を分けた」と振り返った。選手個々の実力だけを比較すれば、負けるはずはない。だがアウェーでヨルダンの激しさ、厳しさに押され、負けられない気持ちの前に屈した。まさにインテンシティが欠けていた。ザックが「チームがいい時は、インテンシティが高まっている」と話すように、結果に直結する要素でもある。

 セリエAでは最後の2試合にフル出場と、状態面は急回復した。けがで休養中は、ひざの状態面だけでなく自分自身と向き合う時間があった。「プレーにおいても、メンタル面でも見えなかったものが見えた」と言う。インテルと日本代表で突っ走ってきた日々。足を止め見つめ直す機会とポジティブにとらえた。故障というマイナスを、成長への助走とした。

 今回の合宿が始まって全体練習後には、黙々とジョギングをこなす。前日には練習を見ていた子供から声援を受け、手を振ったが、この日はミックスゾーンを無言で通り過ぎた。大一番の前に控える、大事なブルガリア戦へ気持ちを高めた。長友がキーワードを体現し、世界への扉をこじ開ける。【高橋悟史】

 ◆インテンシティ

 23日の代表発表会見で、ザッケローニ監督が言ったイタリア語「intensita」の英訳。激しく、ダイナミックに、スピーディーにプレーすることを表す。今季のチャンピオンズリーグでは、王者バルセロナが、インテンシティを見せたBミュンヘンに準決勝で敗れるなど、現在サッカーの重要な要素でもある。