<国際親善試合:日本4-2ニュージーランド>◇5日◇国立

 日本代表のMF香川真司(24)が、W杯イヤーの初ゴールを挙げた。前半7分に自身の突破から得たPKを、右足で冷静に決めた。クラブ、代表を通じて昨年9月ガーナ戦以来の得点となり、代表通算17点目で初のPK弾。その3分前にはFW岡崎慎司(27)の先制点をアシストし、出場機会が少ない所属のマンチェスターUも含め、14年の初得点と初アシストを記録。W杯本番を3カ月後に控え、復活の兆しをつかんだ。

 珍しい光景だ。前半7分。香川が敵陣深く進入すると、得意のステップを踏んでDFをかわした。慌てた相手に倒されると、いつもなら本田が蹴るはずのPKで自らボールを持った。ゆっくりとした助走から左へ蹴ったシュートは、GKの右手をかすめて入った。代表はもちろん、ドルトムント時代も、マンUでも1度もないPK弾。C大阪時代までさかのぼるPKの感触は復活への1歩になった。

 「PKでもゴールはゴール。素直に喜びたい。(フェイントは)一瞬の判断、一瞬のイマジネーションがかみ合った。シュートまでいきたかったですけどね。点を決められたのは、何よりも良かった。自分で取ったやつ(PK)なんでね」

 点を取る喜びを、忘れかけていた。所属クラブでモイズ監督に“飼い殺し”にされ、今季は公式戦無得点。代表を含めても昨年9月10日ガーナ戦以来、半年ぶりの得点だ。前半4分に岡崎へ通した絶好のロングパスも14年の初アシスト。後半17分には香川、本田、岡崎と流れるように4点目の起点を作った。雨上がりのピッチ。交代するまでの79分間で3点に絡んだ。

 4年前のことだ。10年2月14日の東アジア選手権、韓国戦。舞台はこの日と同じ国立競技場。FW大久保(現川崎F)が左膝負傷で、前半22分に出番が巡ってきた。DF闘莉王が退場する不運はあったが、何もできずに前半限りでまさかの途中出場途中交代。悔しくて、試合後のロッカー室で涙目になった。すると、先輩の大久保に怒鳴られた。「めそめそしてんじゃね~よ!」。屈辱を味わった場所で絶望からはい上がるきっかけをつかんだのも、何かの縁だろうか。

 「過去を考えるよりも(近未来に)W杯がある。これで、いい形でマンチェスターに帰ることができる」

 戦いは続く。本田が言うように、W杯までの3カ月を、どう過ごすかで日本の命運がかかってくる。香川が完全復活した時、世界の頂が見える。【益子浩一】