代表強化で重要なことはバリエーションだ-。日本代表のハビエル・アギーレ監督(55)が25日、東京・JFAハウスで日刊スポーツなどの取材に応じた。日本がW杯出場を目前で逃した93年10月のW杯アジア予選イラク戦、「ドーハの悲劇」をメキシコ代表スタッフとして目撃していた指揮官が、10月の親善試合2試合にFWハーフナー、MF香川を招集すること、自身のチームづくりへの哲学などを隠すことなく明かした。

 時には冗談交じりに、時には真剣に、アギーレ監督は言葉をつなげた。実は、日本サッカーにとっては歴史的な瞬間、「ドーハの悲劇」に立ち会っていた。日本サッカーとは20年以上前から、つながっていた。

 アギーレ監督

 私はメキシコ代表のアシスタントコーチだった。メキシコは既にW杯米国大会への出場を決めており、対戦相手となる可能性のある国を視察していた。日本にはラモス、カズがいてダイナミックで技術の質が高い、そういう意味では今の代表に似ていた。あの時、日本に足りなかったのは運だったかもしれない。サポーターのみなさんが悲しんでいる姿を覚えている。21年後に日本代表監督として、このように話すことは想像していなかったが。

 代表監督に就任して、既に親善試合2試合を戦った。年内の親善試合は4試合。年が明けると2連覇がかかるアジア杯(来年1月9日開幕、オーストラリア)が控える中、メキシコ代表を2度W杯に導いたアギーレ流のチームづくりの哲学を明かした。

 アギーレ監督

 私は基本的に選手に合わせてシステムをつくる監督です。代表で重要だと思うことは、バリエーションを持つこと。例えば11人を固めてプレーした場合、相手に読まれてプレーできなくなることがある。(9月の親善試合2試合で)センターフォワード(CF)に皆川、大迫、岡崎を使ったが、比較すると全く違うタイプ。彼らが私にオプションを与えてくれる。代表の豊かさは選手の質に左右される。

 メンバーを固めたザッケローニ前監督とは正反対の言葉。

 アギーレ監督

 選手選考で間違いを犯したくない。そこがキーポイントです。あと、(例えば東京FW武藤のように)良い時期に差し掛かっている選手、波が来ている選手は使うべきです。経験のあるキープレーヤーとなる選手4~5人は必要だと思う。私の中ではほぼ決まっている。既にW杯でプレーしていたり、長年代表で経験を積んだ選手のことです。その周りの4~5人を入れ替える。

 9月の親善試合2試合では、大胆な選手選考を行い、初顔5人が招集されたが、10月の2試合でもサプライズがありそうだ。

 アギーレ監督

 10月の2試合では前回(9月)と比較すると6~7人の選手が入れ替わるリストになると思う。次はハーフナーを呼びます。香川も呼ぶ選手です。質の高い選手は見て、どこで起用するかを見極めたい。香川はポリバレントな選手なので前線の4~5つのポジションをこなせるのでシステム的にもオプションを与えてくれる。

 当面の目標はアジア杯の優勝。9月の札幌合宿初日でも選手にそれを伝えた。

 アギーレ監督

 前回王者として誇りを持って、それを守らなければならない。選手もいる、時間もある。準備はできる。我々は優勝を目指す。そこには努力が必要です。

 18年W杯ロシア大会までの4年間。アギーレ・イズムが日本代表に「強さ」をもたらす。【菅家大輔】

 ◆ハビエル・アギーレ

 1958年12月1日、メキシコ市生まれ。選手としてメキシコ代表で自国開催の86年W杯に出場し、ベスト8。監督ではメキシコの数クラブを指揮した後に、メキシコ代表を率いて02年W杯日韓大会で16強進出。スペインでオサスナ、Aマドリードで監督を務め、10年W杯南アフリカ大会で再びメキシコ代表を率いて16強。その後、サラゴサ、エスパニョールを指揮した。家族はシルビア夫人と3男。