八百長疑惑に揺れる日本代表のハビエル・アギーレ監督(56)が4日、都内で日本協会の「事情聴取」に応じ、あらためて潔白を主張した。この日朝、欧州視察を終えて再来日。その後、同協会の法務委員長を務める三好豊弁護士らから約2時間の聴取を受けた。告訴された場合、スペインで捜査機関に証言を求められるのは来年2月ごろと想定され、その通りなら1月9日開幕のアジア杯オーストラリア大会への影響は回避される見通し。だが、予断を許さない状況は続く。

 まばゆいフラッシュを浴びながら成田空港の到着ロビーに姿を現したアギーレ監督は、都内の自宅に1度戻った後に約2時間の「事情聴取」を受けた。聴取を行った三好弁護士によると、同監督は「このような状況になり大変ご迷惑をおかけして申し訳ない」と謝罪の意を示しつつ、「プロの指導者として八百長のようなことは一切やっていない」と主張したという。

 現地では、アギーレ監督がスペイン1部サラゴサ(現2部)の監督を務めた11年5月21日のレバンテ戦(2-1)に八百長疑惑がかかり、スペイン検察庁反汚職課が動いていると報道された。嫌疑をかけられた関係者30人前後の中にアギーレ監督も含まれるとされる。

 日本協会は既に独自ルートでスペインの弁護士から情報を収集した上で、この日アギーレ監督からも現状を確認。<1>監督の置かれている状況<2>今後の展開<3>八百長の有無、仮にあった場合に関与したかどうか、について聴取した。その際の主張から「現時点で八百長への関与を示す事実はない」と結論付けた。ただ、あくまで「日本協会が客観的な材料として八百長への関与の有無を示す資料を持っているわけではない。現時点ではアギーレさんの言葉を信頼する以外にない」というものだ。

 アギーレ監督はスペインで委託した弁護士から得た情報として「仮に告訴されれば来年2月に1度、裁判所で証言する必要が出てくるだろう」と説明したという。この見込みが正しければ、2連覇がかかるアジア杯の指揮には影響しないが、一方で大会期間中に告訴の有無に関する情報が交錯する可能性もある。

 スペインでは告訴された後に本格的な捜査に入る。アギーレ監督の現状は告訴の1歩手前の段階。告訴されて本格的な捜査の末に嫌疑ありと判断されると起訴、そして公判が始まる。同国の一般的な刑事事件では判決まで3~4年かかることもあり、三好弁護士は「告訴された場合、監督業務にどう影響するかは見極めないといけない。本格的な捜査の結果、起訴されるかが焦点」と冷静に話した。

 日本代表監督が八百長疑惑に見舞われるだけでも異例で、今後の動向も不透明のまま。同弁護士は「展開によっては再び(アギーレ監督に)事実確認する必要はある。これが最後とは思っていません」と慎重な姿勢を示した。日本サッカー界が八百長疑惑で揺れる状況は、まだまだ続くことになりそうだ。【菅家大輔】

 ◆スポーツにおける八百長を含めた違法行為に関する法律

 スペインで2010年に刑法286条として制定。有罪で6カ月から4年の懲役刑が課される(執行猶予のような措置も)。同時に1年から6年の職務停止の処分も課される。<八百長疑惑経過>

 ◆9月27日

 八百長疑惑により、アギーレ監督が事情聴取を受けることになったとアス紙が報じた。原専務理事は「そういう報道が出ていることは聞いている」。また、アジア大会に参加していたU-21日本代表のチームリーダー霜田技術委員長は「聞いたこともないし、こちらは何もしようがない」。

 ◆30日

 日本代表のスタッフ会議が行われた。霜田技術委員長は「(現地で)事情聴取する話も正式に協会には来ていない。現時点で監督の予定は通常通り」。

 ◆10月1日

 日本代表のメンバー発表会見に出席。監督は「私も報道で知った。このことについて心配はしていない。私は穏やかな気持ちで日本で仕事をしている」と余裕の表情。

 ◆17日

 証人として裁判に招聘(しょうへい)される可能性があるとマルカ紙が報じた。10月6日には元サラゴサFWウチェ、元レバンテFWウェリントンが裁判所に出廷し、関与を否定した。

 ◆11月28日

 スペイン検察庁の反汚職課が、12月2日までに監督を含む関係者33人についての報告書を、バレンシア裁判所に提出する方針であるとマルカ紙が報じた。成立した場合は、裁判所の招聘に応じなければいけない。