<アジア杯:日本1-0イラク>◇1次リーグD組◇16日◇ブリスベン

 スペイン時代の八百長疑惑の告発が受理と報道されたハビエル・アギーレ監督(56)は、イラク代表に勝利し安堵(あんど)の表情を見せた。ピンチにも派手なアクションはなし。負ければ苦境のつらい状況にも、動じず2連勝で1次リーグ突破へ大きく前進した。この勝利で、日本代表はAマッチ通算300勝となった。

 試合を通し、アギーレ監督は選手たちのプレーを静かに見守り続けた。「初戦と比べても攻撃のリズムが良かった。1タッチ、2タッチの攻撃があって、クロスの数はパレスチナ戦より少なかったが質は良かった。自分の考えだけど」。わずかに笑みを浮かべた。試合後は、スタンドの日本サポーターに笑顔で手を振った。

 試合開始直後からテクニカルエリアの角に陣取る。腕を組み、時にはポケットに手を突っ込み、ピッチを見守った。前半、ペットボトルについた水滴をタオルで丁寧に拭く余裕も。17分に本田のヘッドがポストをたたくと顔を覆うも、派手なアクションはなし。23分、本田のPKに、何度も手をたたきうなずいた。

 負ければアジア杯の1次リーグ敗退がちらつく局面だった。八百長騒動という特殊な事情を除外しても、代表監督の力量として、厳しい状況に追い込まれる大ピンチだった。その中で、選手とともに戦う姿勢は見せた。後半の出だしや終盤に、FKなどでピンチになったシーンでも、腕組みしたまま動かなかった。騒動の中での勝利に「4年前の経験がある選手が、若い選手に伝えている。長谷部などがしっかりと引っ張ってくれている」と選手の頑張りをたたえた。

 アギーレ監督が就任してから、合宿では食事のたびに全員がそろって「いただきます」を合図に食事を始めていた。それがルールだったが、昨年12月29日に合宿スタートして数日後、ルールを撤廃していた。ある日の食事後、全員が集まった場面で「遅刻をしないことはよく分かった。食事の時間は決めるが、その時間内であれば、早く来た人から食べていい」と告げた。自分の目で日本人の規律を確認し、柔軟な対応を見せた。

 スペインでは八百長疑惑での告発が受理の報道があり、身辺は騒がしい。前日会見では「サッカーの話しかしない」と質問を受け付けなかった。まだ厳しい状況は続くが、唯一勝ち続けることが、アギーレ監督ができる最大の役目だ。【高橋悟史】

 ◆日本の1次リーグ突破条件

 最終戦のヨルダン戦で引き分け以上で突破。負けても、もう1試合のイラク-パレスチナでイラクが引き分け以下なら、日本の突破が決まる。日本がヨルダンに敗れ、イラクがパレスチナに勝つと、勝ち点6で日本、イラク、ヨルダンが並ぶ。その場合(1)当該国の対戦成績でも並ぶので、(2)当該国の対戦での得失点差(3)当該チームの対戦での総得点(4)全試合での得失点差(5)全試合での総得点、の順に上位2カ国を決める。