【ドーハ11日=木下淳】U-23(23歳以下)日本代表が強い絆で五輪切符をつかむ。今日12日に開幕するリオデジャネイロ五輪アジア最終予選(U-23アジア選手権)メンバーに、プロ入り前からの同期生が3組いる。FW久保裕也(22=ヤングボーイズ)とMF原川力(22=川崎F)は山口・鴻南中の同学年で、京都U-18-京都時代を含めて約6年間練習をともにした間柄。結束力を武器に、明日13日の1次リーグB組初戦の北朝鮮戦から始まる最終予選を勝ち抜く。

 あの日の延長線上に今がある。山口・鴻南中の同学年だった久保と原川。久保は部活、原川はクラブチームで授業のクラスも違ったが、中学3年の1年間、ほぼ毎日、同じ時間に会っていた。2人だけの自主練習が日課だった。校舎に隣接する維新百年記念公園で朝は7時から始業まで、夜は9~10時まで。部活とクラブの垣根を越え、無邪気にボールを追いかけていた。

 久保は懐かしそうに振り返る。「いつの間にか一緒にやるようになって。2人だけなんでドリブルとか、壁当てとか。『代表になるぞ』とか何も考えず、ただ楽しく。部活が一斉下校で終わった後や(原川)力がクラブの練習休みの日は、真っ暗になるまでボールを蹴ってましたね」。原川も「別に家は近くなかったけど、毎朝7時前には家を出てた」と卒業まで続けた。

 中学時代、1度だけ対戦したことがある。久保の鴻南中サッカー部と原川のレオーネ山口。9-1で原川のクラブが圧勝した。久保は1得点で一矢報いたが、チームの差は歴然。「力はホントうまくて。だから一緒に練習することでボールタッチとか技術をマネして盗んでた」と原点にした。

 ライバル関係を超越した2人は山口県内で目立つ存在になる。それぞれ京都U-18(ユース)から誘いを受け、チームメートになった。「進路は示し合わせたわけじゃなく『え、一緒なの?』みたいな感じでしたけど」(原川)。京都・立命館宇治高に通いながら京都U-18で練習して高め合い、世代別代表の常連になった。今回の代表には、京都U-18から同期になったGK杉本も選ばれている。

 同じ中学の同学年同士が同時に代表に入ることは珍しい。原川は「中学から同じで代表でも同じなんて、なかなかない。お互いに刺激し合いながら、もっともっと上の舞台を目指せれば」とリオ五輪へ共闘する。久保が13年に欧州へ渡って道は分かれたが、その癖も呼吸も体が覚えている。決戦地ドーハのピッチでは、原川のパスに反応した久保がゴールを陥れるはずだ。

 ◆MF南野とDF室屋 5歳の時、ゼッセル熊取FC(大阪)で出会った幼なじみ。自宅間の距離は自転車で約5分。2人の兄も同い年で「気付いたら一緒にサッカーしてた」と室屋が言えば、南野も「2人で居残り練習してましたね」と懐かしむ。小学6年まで同じで、中学から南野はC大阪ジュニアユース、室屋は高校から青森山田へ。11年のU-17W杯の代表で再会し、過去最高タイの8強に輝いた。U-23代表でも常に行動をともにするほど仲がいい。サイドハーフの南野とサイドバックの室屋が、右サイドを切り崩す。

 ◆MF豊川とDF植田 熊本・大津高の同期で、13年にそろって鹿島に入団した。中学時代のトレセンで初めて出会い、高校からチームメート。プリンスリーグ九州で得点王になった豊川と、U-16から代表に入り続けている植田の2枚看板は全国的にも有名だった。ともに入団2年目から鹿島で出場機会を増やし、昨年3月の五輪1次予選ベトナム戦でも同時にピッチに立った。私生活でも仲が良く、鹿島の寮で誕生日プレゼントを贈り合う関係だ。