天国にいる10歳の少年の夢がかなった。17日、都内で行われた東京Vの新体制会見。新戦力選手として、昨夏、10歳で亡くなった少年の名前が呼ばれた。「背番号55、岩田和磨」。遺影とユニホームを持った会社員の父(48)は「10歳は最年少選手だと思います。空からですけど、一緒に戦っていきたいと思います」と意気込みを代弁。南葛西キッカーズのGKだった和磨君の遺影は笑っていた。

 昨年11月、和磨君の母が新聞に掲載された東京Vの「VERS」という企画に目をとめた。25万円で、51番から100番までの背番号を自分の名前で登録するなど選手を疑似体験できる企画。この日の会見には19人の“新加入選手”が登壇した。その中の1人が和磨君だった。「プロになりたいという夢がかなえられました」と父も笑みを浮かべた。

 和磨君が「テレビが見えない」と言い出したのが小学3年生だった13年の夏。眼科に向かったが、大学病院を紹介されて精密検査を受けた。脳腫瘍だった。視神経に腫瘍ができ、著しく視力が低下していた。翌年1月には全身に転移していることが分かった。昨年8月21日まで、1年半以上もの闘病が続いた。

 入院中の和磨君の楽しみはボールを手にテレビから流れるサッカーニュースを聞くこと。幼稚園の年長から始めたサッカーが大好きだった。「こういった巡り合わせですから、スタジアムにも連れて行けたら」と父は言う。背番号55の新戦力は空の上から東京Vを見守っていく。【栗田成芳】