川崎FのFW我那覇和樹(27)の潔白が証明された。同選手がドーピング規定違反取り消しを求め、スポーツ仲裁裁判所(CAS=本部・スイス)に提訴した件で、CASは27日、我那覇の訴えを認め、Jリーグ公式戦6試合出場停止処分の無効などを命じた。昨年4月に受けた静脈内注射について「我那覇に過失はなかった」と裁定。Jリーグの制裁手続きの不備を指摘した。同選手をサポートした弁護団はJリーグに対し、選手本人をはじめとする関係者への謝罪と名誉回復などの対応を求めた。

 約1年間にわたる無実の訴えが認められた。クラブを通じてCASの裁定結果を聞いた我那覇は練習後に「いい方向に出てよかった」と安堵(あんど)の表情を見せた。詳細を弁護団を通じて知ると「頭の中が真っ白になり、今もまだ実感がわいていません。すっきりした気持ち」とコメントを発表した。

 我那覇は昨年4月に体調不良のため医師の指示で静脈内注射(点滴)を受けた。当時の世界反ドーピング機関(WADA)は「静脈内注入は正当な医療行為を除き禁止」と規定していたが、Jリーグは症状から「正当な医療行為」に当たらないと判断。ドーピング違反として処分した。この点についてCASは「正当な医療行為に該当することを認める心証を持てる」との見解を示した上で、自分の意思で点滴を打ったわけではない我那覇に過失はなかったとして「制裁を科すケースではない」とした。

 今回の仲裁に我那覇は4500万円もの巨額を費やした。「サッカーを裏切るようなことはしていない」と潔白の証明に奔走した。騒動が起こって以来、Jリーグなどの公式戦では1点も取っておらず、日本代表からも遠ざかった。一方で選手やサポーターらが募金活動に協力。総額は1600万円に達したという。

 CASはJリーグに対し、昨年5月の6試合出場停止処分の取り消しと、仲裁費用の負担、さらに我那覇に対し2万ドル(約210万円)の支払いを命じた。我那覇の弁護団は「我那覇選手および後藤医師(前川崎Fドクター)ならびに関係者に謝罪し、名誉回復など適切な措置を講ずること」などをJリーグに求めた。団長の望月弁護士は、現時点で名誉棄損など法的手続きをしないとした上で「Jリーグは紳士の集団。何をしなければならないのかは分かっていると思う」と話し、今日午後に会見するJリーグの鬼武チェアマンの対応を見極める。