フランスの優勝でワールドカップ(W杯)は幕を閉じた。

 準決勝から中4日のフランスに対し、中3日での戦いとなったクロアチア。3試合連続で延長戦を勝ち上がり、フランスより1試合多く戦った形だっただけに、コンディションの問題は間違いなくあった。

 4-2という結果は、決めるべきところで決めたフランスと、チャンスはあったけど決められなかったクロアチアの差だった。それでもクロアチアは粘り強く戦った。FWマンジュキッチがGKロイスに鋭く詰め寄り、相手のミスからゴールした場面は、全員がハードワークをこなすクロアチアの良さが出た。

 今大会を振り返ると、優勝したフランスをはじめ自陣にブロックをつくり、相手を引き込んだ状況からカウンターを仕掛けるチームが目立った。一発勝負の短期決戦というW杯ならではの大会方式を踏まえ、まずは守備から入る意識が高かった。ただ相手にやらせない守備をするのでなく、ボールを奪ってからどう攻めるのか、味方選手の位置も意識しながらチーム全体がイメージを共有しながらプレーしていた。そういったチームが上位に勝ち上がっている。

 逆にスーパースターの存在が大きいチーム、メッシのアルゼンチン、ロナウドのポルトガル、ネイマールのブラジルなどは敗退してしまった。フランスにしても、3位になったベルギーにしても個人能力の高い選手が組織の中でしっかりプレーした。そういうチームは本当の意味で強かった。

 今大会で最も印象に残った場面は、やはり日本-ベルギー戦の後半ロスタイムの決勝ゴールだろう。あの強烈なカウンター攻撃は脳裏に焼きついて離れない。日本が2点を取って優位に試合を進めながら、ジワリジワリとベルギーに追い込まれた。3位になった強豪ベルギーから2点を奪ったことは評価されるべきことだが、勝ちきれなかったところに世界の壁を痛感した。

 それでも日本代表は西野監督が短い期間ながら、チームをまとめ、16強という結果を出した。もっと準備期間があればとも思う。例えばフランスのデシャン監督は、2012年7月に就任し、14年W杯ブラジル大会はベスト8、16年欧州選手権は決勝でポルトガルに敗れて準優勝と、時間をかけてチームをつくり、今回の優勝につなげた。やはり代表チームで結果を残すには、長いスパンでの組織づくりが必要になってくる。

 私自身これまでサッカー選手としてのコンディション維持を優先させてきたため、W杯を深夜に見ることはなかった。だが今回はリアルタイムでじっくり選手の動きを見つめた。あらためて個人のスキルの高さ、強豪チームの組織力と戦術には驚かされることばかり。一つのプレーの裏にある考え方や、重みを感じられた。(永井雄一郎=プロサッカー選手、元日本代表)

サッカーW杯ロシア大会 決勝トーナメント1回戦 日本対ベルギー 試合が終了し、号泣する乾貴士(左)をなぐさめる本田圭佑。右は武藤嘉紀(撮影・PNP)
サッカーW杯ロシア大会 決勝トーナメント1回戦 日本対ベルギー 試合が終了し、号泣する乾貴士(左)をなぐさめる本田圭佑。右は武藤嘉紀(撮影・PNP)