W杯の決勝戦は、いつも震える。4年に1回、世界200チーム以上が参加する予選を勝ち抜いた2チームが戦う。男も女も、子どもも大人も、宗教や民族を超えて世界中が見守る先にあるのは、たった1個のボール。人類が創造した最高峰のスポーツの祭典だ。


フランス対クロアチア 優勝メダルを披露する、左からフランスのエムバペ、デンベレ、トーバン(撮影:江口和貴)
フランス対クロアチア 優勝メダルを披露する、左からフランスのエムバペ、デンベレ、トーバン(撮影:江口和貴)

 テレビで見る10億人に対して、生で見られる観客は約8万人。今回は震えるような瞬間が多かった。ゴールだけでも6つ。オウンゴールにPK、目の覚めるミドルシュートに信じられないミス。VAR判定もあった、乱入者もいた。落雷に雨。これほど「イベント」の多い決勝は初めてだ。


フランス対クロアチア 優勝を決め、表彰式で喜ぶフランスの選手たち(撮影・PNP)
フランス対クロアチア 優勝を決め、表彰式で喜ぶフランスの選手たち(撮影・PNP)

 テレビでは伝わらない感動と興奮が、現場にはあふれている。2年前、リオデジャネイロ五輪のサッカー男子決勝をマラカナンスタジアムで取材した。ブラジル国歌にスタンドが揺れ、ネイマールのゴールに鼓膜が破れそうになった。心臓が締め付けられる気分は、生でないと味わえない。

 今大会、ロシア入りした日本人サポーターは1万人と言われた。決してアクセスがいいわけではなく、旅費もかかる。それでも、ベルギー戦を見たサポーターは幸せ。歴史に残るような試合を目に焼き付け、空気感を味わえたのだから。

 W杯は終わった。「次はテレビではなく、ビール片手にスタンドで(カタールはアルコール禁止だが)」と思っても、4年は長い。ただ、サッカーは続く。18日からはJ1も再開。生で試合に接する機会は、いくらでもある。W杯でサッカーに興味を持ったのなら、地元のJクラブを応援するのもいい。スタジアムに行けば新しい発見がある。

 まだまだ日本に「スポーツ文化」が根付いたとは思わないが、多くの国民の目が今大会でスポーツに向いたのは確か。興奮や感動、熱は続く。20年東京五輪開幕まで24日であと2年、本格的なカウントダウンが始まる。19年にはラグビーW杯もある。日本人は、これらを「生」で味わうことができる。ここでスポーツ熱が高まれば、さらに4年後は期待できる。代表を強くするのは国民の熱。W杯を見ると、よく分かる。【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIの毎日がW杯」)