つい一瞬、目をそらしてしまった。日本が決勝トーナメント1回戦でベルギーに2-3で逆転負けした試合後、DF長友はこれから日本人選手が強化すべき課題を語っていた。「走力やフィジカルは日本サッカー界全体で若い世代から取り組まないと。この厳しい戦いでは、技術では勝てない」。身体能力の向上は欠かせないと話す言葉に熱がこもった。

 その時、長友の背後を通り過ぎたあるベルギー代表選手の姿が脳裏に残っている。身長170センチの長友より頭1つ以上大きなDFは、ゼロカロリーのコカ・コーラをがぶがぶと飲みながら悠々と去っていったのだ。食事からヨガなど、今の日本のサッカー選手で最もフィジカル強化に精通し、気を配る長友。「この大会のために全てを懸けてきた」と話した男は、このDFを上回れなかったのか。日本人として悔しさがこみ上げた。

 長友が「(試合を)やってて、こいつら化けものだと思った」と舌を巻いた集団。試合直後に清涼飲料水を片手に歩く時点で、意識の面ではまだまだ改善点があるのだろうと察した。同時にそれは、あの圧倒的なスピード、高さはベルギーの限界ではないことを意味する。付け入るスキはあると思う気持ち半分、末恐ろしい気持ち半分だった。

 長友は言った。「自分がやってきたことは、伝えられることはあると思う。若い選手に重要性だったり、どういうトレーニングをしていけばいいのか伝えたい」。4年後の日本は、フィジカルで世界と戦える集団になっているのだろうか。欧州列強をはじめ他国の進化とともに、見守りたい。【岡崎悠利】